
公正証書遺言を作成する場合、公証人は、なりすまし防止の点から本人確認を厳格に進めます。
その本人確認は通常、実印と印鑑証明書によってされます。
しかし、たとえば、公正証書遺言を作成するために公証役場に出向いたはいいが、実印とは違う印鑑、要はただの認印を間違えて持参してしまった場合。
普段、実印を使うことはないでしょうから、認印を実印と勘違いしてしまうことはありえます。
印鑑証明書と実印で公証人は遺言者の本人確認をしますが、それができない。
では、顔写真付き身分証明書で本人確認を、ということになっても、特に高齢の方に多いのですが、そのようなものは何も持っていないといった場合。
こうなると厄介です。
実印と印鑑証明書で本人確認もできず、顔写真付き身分証明書もない、となると、どうやっても本人確認はできません。
いくら自分で、「本人に違いない」といったところで関係ありません。客観的に証明しなければなりません。
以前、経験したケースでは、公証役場に遺言者、証人2名が集まったが、いざ印鑑を確認したところ、実印ではなく認印であったということがありました。
しかも、顔写真付き身分証明書は何もなく。
その時はどうしたかというと、このままでは遺言書を完成させることはできないため、いったん手続きを保留し、実印を探しに急いで遺言者宅に向かいました。
実印が無事に発見できれば、公証役場に引き返す。
暑い中探し回ったのですが、想定どおりというか、結果的に実印は見つかりませんでした。
仕方がないため、あらためて印鑑登録をすることになりましたが、顔写真付き身分証明書がないのでその日に再登録することはできません(顔写真付き身分証明書があれば、その日に登録を完了することができます)。
その日はお流れにして、再度、日程を組むことになりました。
証人を公証役場に手配してもらっている場合、公正証書遺言は作成されていなくても、その方の謝礼の支払いは必要になります(忙しい中、時間を作って足を運んでいる)。
結果的にお金を(当然、時間も)ムダにしてしまうことになるので、「印鑑間違い」にはくれぐれも気を付けて遺言作成の場に臨むことです。
日程を再度組むにあたり、公証人の予定が比較的あいていたのがせめてもの救いでした(時期や公証役場によっては、予約を入れられる日が数週間先といったこともありえます)。