
インターネットの技術の進歩によって、パソコンやスマホが爆発的に普及しました。現代社会においてなくてはならない、必要不可欠なものとなっています。
そのような中で相続が発生した場合、パソコンやスマホの中のデータ、アカウントなどはどうなってしまうのか、疑問に思われるのではないでしょうか。
それらも相続されるのでしょうか。いわゆる「デジタル遺品」についての解説です。
1.デジタル遺品とは
デジタル遺品(もしくはデジタル遺産)とは、主に被相続人が生前保有していた次のものを指します。
◆パソコンやスマホの中のデータ(画像、文章、アカウントなど)
◆USB、外付けハードディスクなどの記録媒体
◆メール、ホームページ、ブログ、クラウドデータなどのweb上のデータ
◆ネットショッピング、有料サービス、ネット銀行、ネット証券口座など
相続人が、パソコンやスマホなど電子機器自体を発見、確認できても、実際にその中にアクセスしなければ遺産すべてを把握することは困難です。
なかにはお金が絡むものもありますので、把握できないことにより、想定外の損失が生じる場合もあります。
パソコンやスマホにログインするにはパスワードを入力する必要があります。しかし、他人が分からないようなパスワードを設定していることが通常ですので、簡単にはログイン、アクセスできません。
場合によっては専門業者に依頼して解析、解除することになりますが、多額の費用がかかってしまいます。
2.デジタル遺品は相続される?
デジタル遺品も通常の遺品と同様に相続の対象(または実質、相続の対象)になると考えてもよいです。
たとえば、被相続人の使用していたパソコン自体は当然相続できますが、その中に保存されているデータはどうなのかという問題があります。
「データなどはモノでも権利でもないため相続されないのでは」と考えることもできますが、パソコンなどの電子機器自体が相続対象になるため、その中のデータも一体としてみることができ、データそのものは処分可能です。
したがって、処分可能ということはデータ自体も「事実上」、相続されると考えてよさそうです。
また、インターネットアカウントなどの契約に基づくものについては、データとは異なり契約なので、相続できないなどの特約がない限り、通常の契約と同様に、基本的には相続性があります。
3.デジタル遺品にアクセスできない場合のリスク
相続できるとしたとしても、一方で、デジタル遺品にアクセスできない、内容を把握できない場合のリスクはいまや想定以上にあるのではないでしょうか。
◆仕事をうまく引き継げない、必要なデータが分からない
◆有料サービスが無駄に引き落とされている
◆インターネット上の口座なので、お金をおろせない
◆株やFXなどの金融商品を放置したことによって、かなりの損失が出ている
◆知らないうちに個人情報が流出していた
以上のような弊害やトラブルが生じる可能性があります。
場合によっては相続人の間で責任の押し付け合いなどが起き、最悪「争続」に発展する可能性もあるかも知れません。
4.アカウント情報などを整理しておく
デジタル遺品をそのままにしておくのは避けるべきです。
相続人が困らないよう、生前できることをやっておくことです。
最も有効な方法として、抵抗が無ければ家族とアカウント情報などを共有することですが、一般的には難しいことでしょう。
共有までは困難であっても、アカウント情報などを一覧表にしておくことはできるのではないでしょうか。
財産目録を作成しておき、そこにそれらの情報を記載しておくのです。
目録までとはいかなくとも、最低限、IDやアカウント情報などをメモした紙を残しておき、自分の死後、発見される可能性の高い場所に保管しておくことをオススメします。
たとえば、遺言書の中や、銀行通帳の中にはさんでおいたり、貸金庫の中に入れておくことです。それらは相続人の目につきやすい場所なので、発見される可能性が高いといえます。
5.まとめ
デジタル遺品の問題は今後ますます議論になってくるところです。
前述のようにメモなどを残しておく方法は一例ですが、遺された家族にムダな費用や労力をかけさせないためにも、いわゆるデジタル終活を生前やっておくことです。
エンディングノートを活用するのもよいでしょう。詳しくは<エンディングノートとは?遺言書との違いは?>
そこにそれらデジタル情報を書いておくこともオススメします。