葬儀、葬式費用はだれの負担?

1.葬儀、葬式費用の問題

相続開始後に生じる主な費用として、代表的なもので葬儀、葬式費用(以下、葬儀費用)があります。

葬儀費用にあたるものとしては、葬儀会社に支払う費用、参列者などの飲食に係る費用、お布施、戒名料、お心づけ、埋葬、火葬、納骨の費用など数多くあります。

この葬儀費用ですが、負担者はだれなのか、負担方法をどうすればよいのかといったところが最も悩ましい問題なのではないでしょうか。

「一部の相続人が立替える(負担する)ものなのか」それとも「相続財産から引き出して葬儀費用に充てても良いのか」など考え方はいくつかあります。

葬儀に関連する費用は、場合によっては数百万円かかることもあります。それを相続人がいったん立替る(負担する)といっても簡単なことではありません。

額が額だけに相続人間でトラブルになりやすい部分です。

2.葬儀費用はだれの負担?

そもそも葬儀費用の負担(負担者や負担割合など)について定めた法律はありませんが、基本的に葬儀費用の負担者について次の見解があるといわれています。

①喪主が負担すべき

②葬儀会社との打ち合わせや契約行為など葬儀を実際に取り仕切った者が負担すべき

③各相続人が(法定相続分にしたがって)負担すべき

④その地方、地域の慣習や条理により決せられるべき

以上の4つの見解がありますが、①の喪主が負担すべき見解が有力です。

3.相続人全員の合意があれば

もっとも、負担者や負担方法(割合)について相続人全員の合意があればその合意にしたがいます。

そもそも葬儀費用自体は相続開始「後」に発生するものなので、厳密には相続債務とはいえません。

相続債務として、当然に各相続人が法定相続分の割合で負担するものではないのです。

また、相続開始後に発生することから、「相続財産」とはいえず、まったくの別ものなのです。

そのため、基本的に遺産分割の対象にもなりませんし、当然に相続財産から費用を支出してよいことにもなりません。

しかし、相続人全員が合意しているのであれば

・相続財産から支出すること

もしくは

・葬儀費用やその負担者、負担方法などについて遺産分割協議の対象とすること

など様々な選択肢のもと、柔軟に決めることができます。

一般的には、相続人全員の合意を前提として、葬儀関連の費用は相続人の共通費用とみて、相続財産から控除して、残りの財産について「法定相続分で分ける」もしくは「遺産分割を行う」ことになるのではないでしょうか。

4.争いがある場合は?

葬儀費用の負担の問題は、遺産分割調停の対象とすることができるため、協議で合意できないようであれば、思い切って調停を行うことも考えられます(調停まで進むということは、通常は葬儀費用の問題だけにとどまらず、遺産の割合などについても話し合うでしょう)。

前述のとおり、あくまで葬儀費用は相続財産とは別の問題ですが、相続人の話し合いの場である調停においてであれば、遺産分割の対象とすることも可能です。それを認めない理由はありませんし、むしろまとめて話し合った方が合意に向けて都合がよいでしょう。

しかし、調停も成立せず、次の遺産分割審判(裁判手続き)に移行した段階においては、基本的に葬儀費用についての問題は審判の場では扱われないので、別途、一般の民事訴訟(不当利得返還請求など)で争うことになります。

つまり、最終的には家庭裁判所ではなく、地方裁判所の管轄(金額によっては簡易裁判所)になるのです。

5.領収書などを残しておく

費用を負担した相続人は、きちんと領収書、明細、支払いメモを保管しておく必要があります。領収書などがなければ、他の相続人からはそれが使途不明金とみられて、あらぬ疑いをかけられてトラブルの元になりかねません。

被相続人のキャッシュカードが手元にあるからといって勝手に、他の相続人の同意なく相続預金から引き出す行為はやめておくことです。詳しくは<遺産の不正使用の疑いや遺産を隠している場合は?>

6.まとめ

葬儀会社への支払い、寺院へのお布施、仏具店への仏壇や位牌の代金の支払いなど、相続開始後にかかってくる費用は多くあります。

それらは基本的に喪主が負担するものですが、相続人間で別途、調整することができます。

合意が成立せず、遺産分割審判まで進んでしまうと、審判の場では葬儀費用の問題はもはや取り上げてくれません。

通常の訴訟となってしまいます。

なるべく話しがこじれないように、費用を負担した相続人は、かかった費用の領収書などを必ず保管しておくことです。

なお、相続法改正により制定された「遺産分割前の預貯金の払戻制度」を利用すれば、口座凍結していても引き出すことができる場合があります。詳しくは<遺産分割が終わるまで預金を引き出せない?遺産分割前の預貯金の払戻制度>

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