遺産分割調停に出席できない場合はどうする?無断欠席すると?

1.相続人が出席できない場合

遺産分割調停は原則、相続人全員が家庭裁判所に出頭(出席)して話し合います。だいたい1か月から1か月半に1回のペースで開かれますが、どうしても出席できない場合もあることでしょう。

病気や仕事の関係、遠隔地に住んでいるなど理由は様々です。

難点は、遺産分割調停の管轄家庭裁判所は相手方の住所地になるため、相手方が関東地方で、申立人が九州地方といったこともあります。

そのため、体調面の問題であったり、遠方であったりと、簡単には出席できない場合もあるのではないでしょうか。

そこで、以下の方法を利用することによって、現地に行かなくてもよくなる(もしくは出席しなくてよくなる)ため、検討しても良いのではないでしょうか。

 

遺産分割調停について詳しくは<遺産分割協議ができない、成立しない場合は?遺産分割調停の解説>

①調停案の受諾(受諾書面の提出)

当事者が遠隔地に住んでいる場合など、正当な理由により出席することが困難な場合に、調停委員から提示された調停の案を受諾する書面を提出して、他の当事者が期日においてその調停案を受諾したときは、調停を成立させることができます。

分割案には賛成しているが、出席することが困難な場合や、調停を早く終わらせたい(もしくは関心がない)当事者において取られる方法です。

調停案が家庭裁判所から送られてくるため、その内容に問題がなければ受諾書面に署名押印して、印鑑証明書を同封のうえ返送すればよいだけです。

そして、調停期日の現場において他の出席当事者が調停案に同意すれば、そこで調停が成立します。

②代理人選任

弁護士を代理人にして出席してもらう方法で、最もイメージしやすいのではないでしょうか(なお、代理人とともに本人が出席しても構いません)。

また、家庭裁判所の許可を得れば弁護士以外の者も代理出席が可能です。

③電話会議システム

遠隔地に住んでいるため、出席することが困難などの理由があれば、当事者の意見を聴いたうえで、家庭裁判所が相当と認めれば電話会議システムを利用することができます。

電話会議システム、つまり電話でのやり取りで調停手続きを進めていきます。

実際の方法ですが、原則、欠席当事者自らが最寄りの家庭裁判所に出向いてもらい、その家庭裁判所から(代理人を選任している場合は、代理人事務所から)電話をつなぐことになります。

なぜ、家庭裁判所に出向く必要があるのか。

非公開の必要性(調停内容が他人に漏れる危険性)やなりすまし防止などの関係で、自宅に電話をつなぐことは基本的に予定されていないからです。

当然、携帯電話も認められません。

電話会議システムを利用したい場合は、調停期日までに家庭裁判所に利用したい旨の上申書を提出する必要があります。

④相続分の放棄、相続分の譲渡

調停の当事者からいっそのこと抜ける方法です。

相続分を放棄すれば排除決定(調停から除外するための家庭裁判所の決定)がされます。

また、他の相続人に対し自己の相続分を譲渡することによっても調停から離脱することができます(なお、相続分の放棄者、譲渡者は、場合によっては利害関係人として調停手続きに関与することがあります)。

この場合、別途、相続分の譲渡書などが必要となります(印鑑証明書付で)。

なお、勘違いし易いところですが、「相続放棄」ではありませんので、相続分の放棄・譲渡をしたとしても、債権者が相続分の放棄、譲渡を承諾しない限り対外的な関係者である債権者からの請求(相続した借金の返済など)を拒むことはできないため、慎重な判断が求められます。

 

相続分の放棄について詳しくは<相続放棄した相続人の持分はどうなる?相続分の放棄の場合は?>

相続分の譲渡について詳しくは<債務も譲渡できる?相続分の譲渡とは?>

2.正当な理由で出席しない場合は

単に出席したくない、面倒くさい、など正当な理由がないにもかかわらず調停を欠席した場合、5万円以下の過料に処せられることになります(もっとも、実務上は過料処分を受けることはほぼありません)

完全に無視し続けると、調停不成立で遺産分割は当然に審判に移行します。

自分の言い分、希望などが何も反映されない形で審判がされる可能性があります。

3.まとめ

遺産分割調停に出席できない特別な事情、理由があれば、それに対応できる制度がいくつか用意されています。

「出席したいけど、遠すぎる」

「体調面が不安」

「遺産分割に関心がない」

このような場合は、以上の方法を検討してみてもよいかもしれません。

無断欠席は自己の意見が反映されない(場合によっては不利)だけなのでやめておきましょう。

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