1.登記費用とは?
相続登記の費用、誰しもが気になるところではないでしょうか。
この登記費用、相続のご相談やお問い合わせなどをいただいた際におおまかな「報酬」はお伝えすることはできますが、報酬だけが登記費用ではないことをご存じでしょうか。
正確には、司法書士の報酬に「実費」を加えた合計額が登記費用になります。
そしてその実費、一般的に送料や交通費などが思い浮かぶことでしょうが、実費の中で大部分を占めているのは「登録免許税」といわれる法務局に納める税金です。
あまり知られていませんが、登記をするには税金を納める必要があるのです(一部、非課税となる登記もあります)。
税金なので、登記をだれに頼んでも、だれがやっても(もちろん、自分でやったとしても)かかってくるものになります。
2.登録免許税はどうやって分かる?
ではこの登録免許税、どうやって分かるのか。
気になるところですが、それを知るためにまずは対象不動産の固定資産税評価額を把握する必要があります。
なぜなら、登録免許税は固定資産税評価額を元に算出するからです。
毎年4月、5月ごろに役所から固定資産税納税通知書が届くと思います。
そこには納付書とともに固定資産税課税明細書が入っています。
自治体によりフォーマットやタイトルが異なる場合もありますが、金額がたくさん書かれている書面です。
その書面の、「評価額」(または「価格」)といった欄に金額が書かれていると思いますが、その金額が、不動産の固定資産税評価額となります(どの部分(欄)が評価額なのか、特にマンションなどは判別が難しい場合があるためご注意ください)。
評価額(価格)が分かればあとは簡単です。実際に登録免許税を計算します。
登録免許税の税率は、相続登記なら評価額の0.4%です。
たとえば、土地建物を相続登記する場合、
・土地の評価額が1000万円
・建物の評価額が500万円
とします。
対象物件の評価額の合計は1500万円で、登録免許税はこの0.4%である6万円になります。
このように、お手元に固定資産税課税明細書があれば、それを準備してお問い合わせいただくとスムーズに登記費用の概算をお伝えすることができます。
なお、贈与登記の税率は2%です(相続登記の5倍)。
以下は、目安として相続登記、贈与登記それぞれの登録免許税額の早見表です。
固定資産税評価額 | 相続の登録免許税額 | 贈与の登録免許税額 |
500万円 | 2万円 | 10万円 |
1000万円 | 4万円 | 20万円 |
1500万円 | 6万円 | 30万円 |
2000万円 | 8万円 | 40万円 |
2500万円 | 10万円 | 50万円 |
3000万円 | 12万円 | 60万円 |
3.固定資産税課税明細書がない場合
固定資産税課税明細書を捨ててしまった、失くしたなどで手元にない、といった場合であっても、役所で取得できる「固定資産税評価証明書」(呼称は自治体ごとで異なります)があれば大丈夫です。
固定資産税評価証明書には不動産の評価額(価格)が記載されているので、それを元に登録免許税を出すことができます。
役所の資産税課などで取得できますが、登記名義人ではない相続人が取得するためには、
・所有者が死亡していること
・自分が(請求者が)その所有者の相続人であること
を証明する戸籍謄本などが必要になります。
4.戸籍謄本取得も依頼する場合
上述のとおり固定資産税課税明細書(固定資産税評価証明書)があればだいたいの登記費用は出せます。
しかし、相続登記の場合、費用を出すに際して登録免許税とは別に考慮しなければならない点があります。
それは、戸籍謄本一式の取得も依頼される場合です。
相続登記には戸籍謄本が必要になりますが、必要となる戸籍謄本は1通ではありません。
被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要になりますし、相続人全員の戸籍謄本も必要です。
また、相続人がだれになるかによって必要となる戸籍の範囲が変わってきます。
相続権第三順位である兄弟姉妹が相続人となる場合は、子が相続人となる場合に比べて必要となる戸籍が増えます。詳しくは<相続手続きの戸籍、どこまで必要?いくらかかる?>
そして、具体的に何通を取得すれば必要な戸籍がすべて揃うかは実際に取り進めてみなければ分かりません(経験上、だいたいの通数は分かりますが)。
戸籍謄本を取るにも、戸籍交付手数料が当然かかります。
それを取得するための往復送料もかかります。
また、一般的に司法書士事務所は1通〇〇〇円といった報酬設定をしています。
したがって、戸籍を何通取ることになるかはじめは分からない中においては、たとえ登録免許税が分かっていたとしてもざっくりした登記費用しか出すことができません。
5.戸籍は揃っている、固定資産税課税明細書もある
戸籍謄本関係、銀行口座の相続手続きをするにあたりすでに取得済、といったケースもあります。
戸籍がすべて揃っていて、固定資産税課税明細書も手元にある、といった場合、ご相談いただいた時点で、確定金額に近い金額をご案内することができます。
もっとも、実際の事件の難易度により報酬加算がされることもあります(特殊な事例を除いて基本的には難易度加算がされることはありません)。
また、送料がいくらかかるかだったり、たとえば相続登記する対象不動産が流山市と八王子市にあるといったような申請先の登記所が2以上ある場合や相続する物件数などで費用は変動するため、はじめにお問い合わせいただいた時点で「確定した金額」をお出しすることは難しいです。
あくまで概算であることをご承知おきください。
6.まとめ
基本的に、登記費用とは司法書士の報酬と法務局に納める登録免許税その他実費(戸籍取得費用、送料、交通費など)を合計したものになります。
「相続手続きを頼みたいけど、費用が気になる」
「驚くような金額だったらどうしよう・・・」
ご相談者様にとってはこのように気になるのは当然のことだと思います。
費用があいまいなまま手続きが進んでいくと、気になって余計なストレスにもなります。
そのストレスを和らげる意味でも、固定資産税課税明細書(または固定資産税評価証明書)をご準備いただければ、面談の際は当然ながらお電話によるお問い合わせの場合であっても、だいたいの金額をお伝えすることは可能です。