
相談事例
夫が先月亡くなったため、相続人全員で遺産分割協議を行いました。
息子に自宅の所有権を、妻である私に配偶者居住権を取得する協議が成立したのですが、配偶者居住権の登記をする前に、所有者である息子が自宅を担保に銀行から融資を受け、抵当権を設定してしまいました。
同時に抵当権の設定登記もされているようです。
将来、仮に息子の支払いが滞り、競売などになった場合、私は出ていかなければならないのでしょうか。
このような事態を想定していなかったので、すぐに配偶者居住権の登記をしませんでした。
1.配偶者居住権の登記をしていないと
配偶者居住権は登記ができ、登記をすることによってはじめて第三者に対してこの権利を主張し、対抗することができます。
しかし、配偶者居住権の登記をする前に、所有者が第三者に自宅を譲渡し、または、自宅に抵当権を設定した場合、それらの者が登記を備えてしまうと(ほぼ100%登記されます)、配偶者居住権をそれらの者に主張しても対抗できません。
登記をした早い者勝ちになってしまうからです。
そのため、相談事例では、妻の危惧しているとおり、将来、息子が返済ができなくなり、抵当権が実行され、競売となって第三者の所有となった場合は、その者に配偶者居住権を対抗できないため、立ち退かなければならなくなります。
2.まとめ
相談事例のようなケースが起こる可能性もありますので、配偶者居住権を取得したのであれば、まずは早めに配偶者居住権の設定登記をすることです。詳しくは<配偶者居住権の登記はどうやる?配偶者居住権の登記のポイント>
自宅を相続した所有者は、配偶者居住権を登記する義務がありますので、通常であれば難なく登記することができます。
もっとも、協力してくれないのであれば、裁判(登記請求訴訟)に打って出るしかありません。