後見人の報酬は家族が払う?本人の資産が少ない場合は?

1.成年後見人は報酬をもらえる?

成年後見人はボランティア、報酬はない、と勘違いしている方もいますが、成年後見人は後見事務の対価として報酬をもらうことが認められています。

第三者が成年後見人となっていれば当然ですが、子や配偶者など、親族が成年後見人となっている場合も同様です(もっとも、親族が成年後見人の場合、報酬を請求するケースはあまり多くはありません)。

2.報酬はだれが決める?

成年後見人には報酬を受け取る権利があるとして、では、その金額はいくらになるのか。

自分で任意に決めてもよいのか。

当然ですが、「今年は色々と後見事務が大変だったから、これくらいの金額でも大丈夫だろう」とはいきません。

自分で勝手に決めた金額を報酬として受領することはできず(そのようなことをすると裁判所から是正を求められ、場合によっては解任に発展する可能性も)、報酬をもらうには家庭裁判所の報酬付与の審判が必要となります。

つまり、家庭裁判所が報酬額を決定します。

家庭裁判所が本人の資力や後見事務の労力などを総合的に判断し、金額を決定します。

この決定に対しては不服申立はできないので、こんなに報酬が安いはずはない、といったことは言えません。

3.複雑な事務を行ったら?

成年後見業務は何年にもわたって行うことが一般的です。事務作業の大変さ、難易度も年や時期によってバラツキがあることがあります。

たとえば、本人が相続人となっており、その本人のために様々な相続手続きを成年後見人自らが行った年があったとします。通常の後見事務の範疇を超える手間暇をかけるケースです。

この場合、「付加報酬」として、通常の報酬額に一定額が加算されることがあります。

例年では年間30万円の報酬のところ、付加報酬が認められた結果、50万円となった、といった具合です。

ただ、この付加報酬、当然に認められるわけではなく、家庭裁判所に付加報酬をもらうに値するだけの後見事務を行ったことやその理由を詳細に説明する必要があります。

そして、家庭裁判所が今回の後見事務には基本報酬に加え付加報酬を与えてもよい、と判断すれば、基本報酬に付加報酬を加算して審判がされます。

4.報酬額が決定したら

報酬は本人の財産から支出します。

報酬付与の審判が出て報酬額が決定したら、成年後見人がその金額を本人口座から引き出す形になります。

審判書に記載された金額と同額を引き出す必要があることは言うまでもありません(適正な出金であることが分かります)。

5.本人に資産がない場合は?

上述のとおり、成年後見人の報酬は本人の財産から支出することになります。

親族、家族が負担するわけではありません(この点について、案外、勘違いをしている方がいます)。

 

なお、「申立時」の費用関係について詳しくは<印紙は?鑑定費用は?成年後見人選任申立ての費用はだれが負担?>をご覧ください。

 

ただ、弁護士や司法書士などの第三者が成年後見人となっている場合、後見事務に対しての報酬が当然に発生しますが、本人にそれを賄うだけの財産がない場合もあります。

生活保護を受けている、年金しか収入がなく収支の状況からいって余裕がない、など。

そのような場合は、一定の要件を満たす必要がありますが、自治体が提供している報酬助成の制度を活用できることもあるので、検討してみてもよいかもしれません(詳細は各自治体にお問い合わせください)。

資力がなくて成年後見制度(第三者後見)の利用をあきらめている方も、そのような制度があることを知っておくと、利用に一歩踏み出すきっかけともなり、また、安心して制度利用できるのではないでしょうか。

自治体の助成とは別に、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが設立した「公益信託成年後見助成基金」の制度もあります(ただし、親族が成年後見人の場合は除く)。

詳細は以下リーガルサポートのホームページをご覧ください。

(成年後見センター・リーガルサポートホームページ)

6.まとめ

成年後見人には後見事務に対して報酬を請求、受領することが認められています。

ただ、前提として家庭裁判所の報酬付与の審判が必要となるので、自分で勝手に金額を決めて本人の口座から引き出すことはできません。

また、報酬は本人負担となるので、家族、親族が支払うことはありません。

報酬を支払えるかどうか、本人の資力に不安のある場合は、自治体の報酬助成や関係団体の基金があるので、検討してみてもよいかもしれません。

これらの助成は、所得の少ない方や生活保護費を受給している方が成年後見制度を利用しやすくするための制度といえます。

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