信託銀行に預ける?後見制度支援信託の解説

認知症などで判断能力が低下している方のかわりに財産管理や身上保護を行う必要がある場合があり、そのために成年後見人をつけることがあります。

そして、成年後見人がついた、もしくはついている状態で、家庭裁判所から後見制度支援信託の利用を促されることがあります。

以下では、この後見制度支援信託の解説をします。

1.後見制度支援信託とは?

後見制度支援信託とは、被後見人本人の有する財産のなかでも普段使用しないお金を信託銀行などに預け、信託していない残りのお金については本人の施設費や生活費、公共料金の支払いをするものとして成年後見人が管理していく、という制度です。

信託銀行などは預かったお金を管理・運用していきます。

たとえば、本人が3000万円の預金を持っているとします。ただ、普段使うお金は年金収入だけで賄っていける。

自宅のリフォームや老人ホームの入居など、臨時で必要なお金が出ない限り、その3000万円は基本的に使うことはありません。

そこで、手元には一定の金額(たとえば200万円)を残しておいてそれを成年後見人が管理し、残り2800万円を信託銀行などに預け、信託されたお金は信託銀行によって管理・運用する、つまりは財産管理の一環といえる制度です。

2.お金以外は信託できる?

支援信託はお金を信託銀行などに預ける制度なので、不動産や株式など、お金以外の財産は信託することができません。

この制度を利用するためにあえて不動産などを売って現金化する必要はもちろんありません。

3.いくら信託する?

信託の最低金額は信託先の銀行によって変わってくるので、詳細は各銀行に問い合わせるなどしておく必要があります。また、どこの金融機関でも取り扱っているわけでありません。

参考に、支援信託を利用できる金融機関やその最低額などの一覧を家庭裁判所のウエブサイトが公開しています。(金融機関一覧)

なお、情報は定期的に更新されているので詳細は各金融機関にお問い合わせください。

4.信託金の元本割れは?

信託というと「投資」のイメージがあり、そのため元本割れの不安、心配をするところですが、一般に思っている投資信託とは異なり、元本割れしたとしても信託銀行が補てんすることになります(元本割れのリスクはありません)。

もっとも、信託先が破綻した場合、信託金は預金保険制度により1000万円までは補償されますが、それ以上は補償されないので、その点は留意しておく必要があります。

5.支援信託利用を判断する基準額は?

この支援信託制度はだれでも対象となるわけではありません。各家庭裁判所がこの支援信託の利用の対象とするための「金額の基準」を設定しています。

家庭裁判所によってその基準額は異なりますが、本人に、

・東京家庭裁判所管轄においては500万円以上

・千葉家庭裁判所管轄においては1200万円以上

の預貯金残高・現金がある場合には支援信託の検討対象としているようです。

もっとも、事案によっては基準額に達していない場合であっても検討対象となり利用を促されることもあるので、基準額はあくまで目安、といえます。

6.家庭裁判所からの検討要請を拒否できる?

家庭裁判所から支援信託の利用検討を促された場合に、それを拒否できるのかどうかですが、当然、家庭裁判所としても強制することはできません。

この後見制度支援信託の制度は裁判所の運用によって導入されたもので、別に法律による規定があるわけでもないからです。

したがって、拒否すること自体は可能です。

ただ、拒否した場合は成年後見監督人を選任する運用になっている家庭裁判所が多いのではないでしょうか。

後見監督人が選任されると、その名のとおり監督人が後見人の事務を直接監督することになります(もちろん、家庭裁判所の監督下にもある)。

また、監督人は第三者がなるので、報酬が月々1万円から2万円発生します。この報酬は本人が亡くなるか、能力が回復して後見が取り消しとなるまで発生します。

7.信託契約は専門職後見人が

支援信託を行うことになった場合、信託銀行などとの信託契約は司法書士などの専門職後見人が行います。親族後見人が行うわけではありません。

契約にあたっては事前に家庭裁判所の「指示書」というものを取得しておく必要があります。

この指示書には、

・どこの銀行に

・いくらを

・定期交付金(本人の収支が赤字の場合、支出を賄うためのお金が定期的に交付される)が必要であればその額、頻度

などの契約の大枠が書かれています。

専門職後見人は家庭裁判所の指示書に基づいて信託契約を行い、信託契約を締結した後はその専門職は後見人を辞任し、財産を親族後見人などに引き継ぐ運用となっています。

同時に、報酬付与を家庭裁判所に申立てます。辞任により後見人の職から外れますが、信託契約など辞任までに行った事務に対しての報酬が発生するからです。

専門職後見人の報酬額は家庭裁判所が決めますが、家庭裁判所によってばらつきがあります。10万円から20万円の間が多い印象です。

報酬に幅があるのは、信託契約にあたっては、

・専門職が信託契約をするため、当初から本人の後見人となる

・すでに親族後見人がいる状態で途中から専門職が後見人に加わり、信託契約をする

以上の2つのパターンがあり、それぞれ業務量が異なるので報酬も変わってくる、ということです。

8.支援信託ができない場合は?

支援信託を検討し、いざ利用をしようとしても本人が書いた遺言書がある場合は、この制度の利用は慎重になる必要があり、場合によっては制度の利用をあきらめるべきでしょう。

なぜなら、信託することによって遺言内容に反する結果になるかもしれないからです。

たとえば遺言書に、「A銀行については長男に相続させる」とあるのに、支援信託制度を利用するためにA銀行を解約して信託銀行に信託金を預け入れたとします。

長男は遺言でA銀行の預貯金をもらえたはずなのに、解約によってもらうことができません。

また、本人死亡後において、信託金がA銀行の解約金を元手にしているとはいえ、当然に長男がその信託金すべてを取得(相続)するものでもありません。

以上のことから、本人の意思を尊重する観点からも、本人の遺言書がある場合には支援信託の利用を控えるべきでしょう(その場合は、後見監督人が選任されることになろうかと思います)。

もっとも、「そもそも遺言書の有無がはっきりしない」ということもあるので、悩ましいところではあります。

9.まとめ

本人がある程度の預貯金現金を持っている場合、家庭裁判所から後見制度支援信託の利用について検討をするよう指示を受けることがあります。

支援信託を利用するか、後見監督人を選任するかのどちらかにはなりますが、いずれにしても本人の財産管理の一環としてされるものです。

ただし、遺言書がある場合は利用を控える必要があるでしょう。

親族後見人が家庭裁判所から支援信託利用の検討を促されることがあるかもしれないので、後見人としても「後見制度支援信託」の概要について知っておいて損はないでしょう。

 

なお、「後見制度支援信託」と「家族信託」は、言葉は似ていますがまったく異なる制度です。

家族信託については参考に<家族信託のご相談の方へ>をご覧ください。

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