借金を請求される?包括受遺者と相続人の違い

遺言で贈与を受ける者、「包括受遺者」は相続人と同一の権利義務を有するとみなされます。

これはどういうことかというと、一部の例外を除き、法律上相続人と同じ扱いをするということです(まったくの相続人、となるわけではありません)。

以下では、その包括受遺者について、相続人との違いも比較しながら解説していきます。

1.全部包括遺贈と割合的包括遺贈

基本的に、包括遺贈には以下の3つがあります。

①全部包括遺贈

「Aに全財産を遺贈する」といったようにプラスの財産、マイナスの財産のすべてを包括的に遺贈することです。

②割合的包括遺贈

「Aに全財産の3分の2を、Bに全財産の3分の1を遺贈する」といったように割合的な一部について、包括して遺贈することです(一部包括遺贈ともいいます)。

③包括遺贈と特定遺贈の併用

「Aに〇〇不動産を、Bに残りの全財産を遺贈する」といったように特定遺贈と包括遺贈が混ざっている遺贈で、Bの部分が包括遺贈となっています。

2.相続人と同じ扱いがされるものは?

包括受遺者は相続人と同一の権利義務がある、と法律で規定されています。

つまり、包括受遺者が相続人ではなく、まったくの第三者であったとしても、相続人と同じように扱うということです。

たとえば、以下のようなものが挙げられます。

◆債務も承継する

全部包括遺贈であれば、借金などの債務も全部承継します。

割合的包括遺贈であれば、その割合分の債務を承継します。

したがって、包括受遺者はたとえまったくの第三者であったとしても債権者から返済を請求されたら、応じる義務があります。

返済したくなければ、包括遺贈の放棄をする必要があります。

なお、包括遺贈の放棄に加えて、その包括受遺者が相続人でもあるのであれば、相続放棄も別途検討する必要があります。

 

詳しくは<遺贈を放棄することはできるか?特定遺贈と包括遺贈の場合>

 

◆遺産分割協議に参加することを要する

相続人と同一、ということは、まったくの第三者であっても相続人の立場として遺産分割の当事者となりますので、包括受遺者を除いた遺産分割協議は無効となります。

◆遺留分侵害請求権を行使されるおそれがある

他の相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害請求を受けるおそれがあります。

◆包括遺贈の放棄は3か月内に家庭裁判所に申立てる必要がある

相続放棄と同じように、相続開始から3か月内に家庭裁判所に放棄の申述が必要です。

◆相続人不存在とならないため、相続財産管理人の選任はできない

包括受遺者は相続人と同じように扱われるため、「相続人の不存在」とはなりません。したがって、相続財産管理人を選任することができません。

3.相続人と異なる扱いがされるものは?

基本的に相続人との違いはさほどありませんが、相続人そのものではないため以下の点で異なります。

◆代襲相続のような制度はない

包括受遺者が遺言者より先に死亡しても、代襲相続のようにその包括受遺者の子が代襲して受遺者となることはありません。

代襲相続ならぬ、「代襲遺贈」といった規定がないからです。

◆遺留分はない

兄弟姉妹以外の相続人は最低限の相続分として遺留分を有していますが、包括受遺者は相続人そのものではないため、遺留分はありません。

◆寄与分や特別受益の適用はない

たとえば、(割合的)包括受遺者が生前、被相続人の特別の寄与により、財産の増加に貢献したとしても、それをもって寄与分を主張し、指定された割合以上の分を請求することはできません。

◆包括遺贈を放棄しても、他の受遺者の受遺分は増加しない

相続放棄をすると、他の相続人の持分が増加することもあります。

 

詳しくは<相続放棄した相続人の持分はどうなる?相続分の放棄の場合は?>

 

一方、包括遺贈を放棄したとしても、他の受遺者の受遺分が増えることはありません。遺贈放棄された持分は他の法定相続人の相続分に加えられるだけです。

◆登記をしなければ第三者に対抗できない

遺贈によって不動産を取得した者は、その不動産の所有権を第三者に対抗するには登記を備えることが必要になります。

 

詳しくは<早い者勝ち?遺言で不動産を相続したのに相続登記をしていないと・・・>

 

◆保険金受取人の「相続人」とはならない

保険金の受取人として、特定人ではなく単に「相続人」と指定されていることがありますが、そのような場合、相続人ではない包括受遺者は保険金を受け取ることができません。

4.包括受遺者の税金は?

包括受遺者にかかる税金、かからない税金は基本的に相続人と同じです

◆相続税がかかる

受遺者には相続税がかかります。贈与税ではありません。

◆不動産取得税はかからない

相続人以外の第三者に特定遺贈をした場合、不動産取得税の課税対象になります。

5.相続税法上の扱いが異なるものは?

相続人以外の者が包括受遺者の場合には、税法上、次の各種特例の適用の際に相続人との違いがでてきます。

◆相続税の基礎控除の法定相続人の数に含まない

相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)の法定相続人の数には包括受遺者は含みません(なお、相続放棄した者は基礎控除の法定相続人の数に含みます)。

包括受遺者も法定相続人の数に含まれるとすると、意図的に包括受遺者を増やせば、その分、基礎控除額も増え、究極には相続税をゼロにすることもできます。

たとえば、10人の者に10分の1ずつの割合的包括遺贈を行った場合、10人としてカウントして基礎控除の人数に含めるとなると、9000万円の基礎控除額となります。

20人の者に20分の1ずつ割合的包括遺贈すれば1億5000万円です。

このように恣意的にいくらでも基礎控除額を吊り上げることができてしまうため、脱税まがいの行為を防ぐ必要性から、包括受遺者を含めることはできません。

なお、法定相続人の数には含めませんが、基礎控除の適用は受けることはできるので、遺贈の額が基礎控除内であれば相続税はかかりません。

◆生命保険金、死亡退職金の非課税枠を使えない

受遺者が取得した保険金については、500万円×法定相続人までの非課税枠を使えません。

◆相次相続控除の適用がない

相次相続控除の適用はありません。

◆未成年者、障がい者の税額控除

相続人が未成年者や障がい者であれば一定の税額控除が受けられますが、これは法定相続人のみに適用され、包括受遺者は適用外です。

6.まとめ

以上のとおり、包括受遺者は基本的に相続人と同一の扱いを受けますが、異なる部分、特に税法上においては扱いを異にする部分が意外にもあります。

包括遺贈の判断は専門性を伴うケースもあり、判断ミスによりまったく結論が異なってしまう、といったこともありますので、場合によっては専門家に相談することをオススメします。

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