1.非課税財産
相続税を算出するには、まず相続財産をまとめる必要がありますが、被相続人の財産すべてが相続税の課税対象となるわけではありません。
なかには「非課税となる財産」もあり、それらは法律で規定されています。
主なものとしては次のとおりです。
墓地、墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしているもの
これらのものは代々礼拝の対象とされ、課税になじまないため、非課税とされています。
生前に墓地などを購入しておけば、相続財産の圧縮(預金や現金などが墓地の購入代金分減ることになる)につながるため一定の相続税対策にもなります。
一方で、相続開始「後」に墓地などを購入しても、「相続開始」時点での現金・預金が相続財産と評価されるため、相続税の節税の点からは効果はありません。
たとえば、被相続人が預金を2000万円残して死亡した場合は、その2000万円に対して課税されます。
では、被相続人が生前、非課税財産である墓地を購入した場合。
預金2000万円から300万円を墓地の購入にあてると、相続税の計算にあたり墓地は課税対象から外れます。
その結果、1700万円だけに対して課税されることになり、300万円分、相続財産の評価を減らせ節税につながります。
逆に、相続開始後に相続人が墓地を300万円で購入したとしても、相続開始時には預金は2000万円であるため、その金額を基準として相続税は計算されます。
なお、骨とう品、純金製の仏具など過度に高価なものや、投資対象になりうるものは課税対象になるので注意を要します。
簡単に言うと、売却して金銭化できるかどうかといった点が非課税財産となるかどうかの判断基準となります。
ちなみに、墓地など非課税財産の購入のために借入をしている場合、その借入金は相続税の計算において債務控除できません。
生命保険金
500万円×法定相続人の金額までの生命保険金は非課税となります。
ただし、相続放棄者が保険金を受取った場合は、その者はこの非課税の制度は使えません。
死亡退職金
500万円×法定相続人の金額までの死亡退職金は非課税となります。
ただし、相続放棄者が保険金を受取った場合は、その者はこの非課税の制度は使えません。
相続人が国や地方公共団体などに寄付をした相続財産
相続人が、相続により取得した財産を国などに寄付した場合、相続税の申告書に寄付した財産の証明書類などを添付することによって、その寄付した財産は相続税の課税対象から外れます。
また、ユニセフ、日本赤十字など特定の公益を目的とする事業を行う特定法人などへの寄付も非課税の適用があります。
相続人が相続財産の寄付を検討しているのであれば、「寄付をしたのに相続税がかかってしまった」といったことにならないよう、非課税の適用があるかどうか確認することが重要です。
この特例を受けるためには以下の要件があります。
①寄付した財産は、相続、遺贈によって取得した財産であること
②相続税の申告期限までに寄付すること
③寄付先が国や地方公共団体など
④寄付を受けた公益法人などが、寄付を受けた日から2年内に、その財産を公益事業に使用していること
以上の要件をすべて満たす必要があるため、たとえば、④の要件である寄付財産が2年内に公益事業として使用されていなければ、場合によっては相続税が課税されてしまうので要注意です。
2.まとめ
相続財産のすべてが相続税の課税対象になるわけではありません。
うまく利用すれば、相続税の節税につながる場合もありますので、検討してもよいでしょう。