
事例
父Aが多額の借金を残して死亡したため、長男Bは相続放棄をした。
子供はB1人のため、Bの相続放棄により第1順位の相続人がいなくなり、相続権は第2順位の直系尊属に移った。
そのため、Aの父である甲(Bからみると祖父)がその借金を含め相続した。
ほどなく、甲が死亡した。
1.相続放棄をした後に代襲相続する場合
事例の場合、結論から言ってBは、甲の相続についても放棄をしなければ、放棄したはずのAの借金を結果的に背負うことになってしまいます。
なぜなら、Bは甲を代襲相続するからです。
ここで出てくる疑問としてAの相続を放棄したのだから、Bは、はじめからAの相続人ではない、したがって代襲する権利も放棄によって失うのではないか、ということです。
しかし、代襲相続の原因として民法は「被相続人(事例の甲)の子(事例のA)が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子(事例のB)がこれを代襲して相続人となる」と規定しています。
事例ではAは甲より「以前に死亡」しているためその条件に当てはまり、Bは甲を代襲相続します。
また、相続放棄は、Aの相続に関しては相続人とはならないだけです。
民法939条
相続放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなす
条文上からも「その相続に関して」つまり、Aの相続に関しては相続人とならなかったものとみなす、ということです。
したがって、Aの相続と甲の相続とは別問題であるため、Aの相続を放棄しても甲を代襲相続することになります。
2.相続放棄は代襲原因ではない
勘違いし易いですが、相続人となる者が相続放棄しても、その子は代襲相続しません。
相続放棄は代襲原因ではないからです。
事例でいうと、たとえば甲が死亡し、父Aが甲の相続について相続放棄をしたとします。
この場合、その子Bは、Aを代襲して甲を相続しません。
相続放棄は代襲原因ではないからです。
3.まとめ
以上のとおり、相続放棄をした場合であっても代襲相続する権利までは否定されません。
事例のように、甲がAの借金を相続した結果、甲の財産がプラスよりマイナスの方が多くなっていれば、Bは甲の相続についても放棄を考えるべきでしょう。