相続人が海外に住んでいても相続放棄はできる?

相談事例

先月に私の母が亡くなりました。

母は、他人の借金の連帯保証人になっているようでその額は数百万円ということです。

母には、プラスの財産としては、いくばくかの預貯金があるのみなので、この度、相続放棄を考えています。

相続人は、長女の私と次女の妹の2人です。

妹も相続放棄をする意思があるのですが、国際結婚をし、現在、海外に在住しています。

相続人が海外にいる場合でも相続放棄できるのでしょうか。

また、できるとした場合、手続きに際して日本に一時帰国して手続きを行わなければならないのでしょうか。

それとも、わざわざ帰国しないで相続放棄ができるものなのでしょうか。

できれば、帰国しないで手続きを終えることができればよいのですが・・・。

1.相続は突然やってくる

被相続人が他人の連帯保証人になっている場合、相続人はその保証債務(連帯保証人の地位)を相続します。詳しくは<保証人の地位は相続される?相続税との関係は?

そこで、相続人としてはプラスとマイナスの財産を比較検討して、相続を承認するか放棄するかを選択することになります。

相談事例のケースでは、マイナスの財産(保証債務)の方が多いため、相続放棄を選択したいということです。

相続はいつやってくるか分かりません。

今や国際結婚の件数は増加傾向であり、また、海外に赴任して働いている人も多くいます。

被相続人が亡くなった時に、その相続人が海外に住んでいることは珍しいことではありません。

相続人としては当然、一時帰国せず手続きを行いたいと考えるでしょう。

2.海外在住でも相続放棄はできる

まず、海外にいる相続人が相続放棄できるかどうかですが、相続人が海外に住んでいても、日本にいる相続人と同じように相続放棄ができます。

ただ、海外にいる相続人が相続放棄をする場合でも原則どおり、相続放棄の申述を相続開始(被相続人の死亡と、自分がその相続人であることを知った時)から3か月内に行う必要があります。

相続人としては、簡単に帰国できない事情もあるでしょう。帰国の時期を待っていては3か月内に手続きができないかもしれません。

そのようなリスクもあり、また、多大な労力、お金を使うことを考えると、一時帰国せず、海外にいるまま相続放棄の手続きができた方がよいに決まっています。

3.海外にいるまま相続放棄はできる

基本的に相続放棄は書類のやり取りで完結できるため、わざわざ日本に帰国する必要がなく、海外にいるまま手続きを行えます。

そして、手続きの基本的な流れや必要な書類は日本にいる相続人とほとんど変わることはありません。詳しくは<相続放棄はどこに出す?必要書類は?>

違いとしては、以下のとおり、申立ての際に海外に在住していることと、その海外の住所地を届出るのみです(なお、家庭裁判所によっては在留証明書が必要になる場合もあります)。

<日本に住民登録がある>

まず、まだ日本に住民登録がある場合(日本に住民票がある場合)は、申述書には日本の住民票上の住所地に加え、書類の送付先として海外の住所地を記載し、併記しておきます。

<日本に住民登録がない>

日本に住民登録がない場合は、住民票がないため、海外の住所地を申述人の住所地として記載します。

4.回答書は海外に発送される

相続放棄申述後、家庭裁判所は相続人の相続放棄の意思を確認するため、相続人に回答書(アンケートのようなもの)を発送します。

日本にいる相続人であれば、日本の住所地宛に普通郵便で送られてきます。

ただ、相談事例では相続人は海外在住なので、普通郵便で発送できません。

この場合、家庭裁判所は、EMSなどの国際郵便で回答書を発送します。

そのため、申立の際にEMS封筒を回答書の発送分と、相続放棄が受理された後に交付される相続放棄申述受理通知書の発送分の提出をしておきましょう。

また、申立人の方で海外の住所地が記載されたラベルを用意しておくと親切です。

5.一緒に相続放棄する共同相続人がいる場合

相談事例のように一緒に兄弟姉妹などの共同相続人も相続放棄するときは、別の方法がとられる場合もあります。

つまり、前述のEMSの方法に代えて、その一緒に相続放棄する兄弟姉妹に海外在住の相続人の分の回答書も送付し、その兄弟姉妹から、海外在住の相続人に発送してもらうという取り扱いをする家庭裁判所もあります(その分、時間はかかります)。

6.まとめ

相続人が海外在住者の場合、手続きが極端に難しくなってしまうと思われがちですが、手続き的には日本にいる場合と変わることはありません。

唯一、回答書などの書類発送の点で異なるだけです。

ただ、申述書に記載する海外の住所地を間違えてしまうと、日本にいる場合に比べて余計に時間と手間がかかりますので、間違えないよう気をつけることです。

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