相続放棄により受け取れない財産、相続放棄しても受け取れる財産

1.相続財産かどうかで判断

相続放棄をすると、不動産や預貯金、車などのプラスの財産はもちろん、借金や滞納税などマイナスの財産も相続しません。

このあたりは当然といったところですが、なかには相続放棄をしたとしても受け取れる財産なのか、受け取れない財産なのか判断に迷うもの、難しいものもあります。

受け取れるかどうか、その判断の基準はその財産が相続財産」にあたるかどうかです。

ある財産が相続財産にあたるのであれば相続放棄をしてしまうと受け取れません。

一方で、ある財産が相続財産ではなく受け取った者の固有の財産であれば、相続放棄をしても受け取れますし、受け取った後であっても相続放棄の申立てができます。

「受け取っても問題はない財産なのかどうか」

非常に微妙なものもあるため、自分で安易に判断しないで専門家に相談することですが、受け取れる財産、受け取れない財産を以下で簡単にまとめてみました。

2.相続放棄をしたら受け取れない財産(=相続財産となる)

被相続人が受取人である死亡保険金

死亡保険金の受取人が被相続人と指定されていれば、それは被相続人に対して支払われるもの、つまり相続財産となり、相続放棄をしてしまうと受け取れません。

なお、相続税の死亡保険金の非課税枠である「500万円×相続人」については、相続放棄した相続人も数に含めることができます(相続放棄がなかったものとしてカウント)

税金、保険料の還付金

被相続人が生前に一括で支払っていた税金などは本人死亡によって結果的に払いすぎていたことになりますが、それは実際に支払った被相続人に対して還付されるものです。

したがって、相続財産となりますので、相続放棄により受け取れません。

3.相続放棄をしても受け取れる財産(=相続財産とならない)

未支給年金

死亡するまでに受け取れるはずであった年金のことを未支給年金といい、年金事務所(年金センター)に、未支給年金申請を年金受給者死亡届と同時に行います。

年金は偶数月に前月と前々月の分が支給されますが、たとえば7月に亡くなったとすると、6月に支給され受け取っていた年金は4月、5月分です。

しかし、6月分と死亡した7月分は8月に支給されますが、本人は死亡しているため受け取れません。

この受け取れない部分が未支給年金となります。

ではその未支給年金はどうなるか、ですが、国民年金法という法律で生計を同じくしていた者が自己の名で、この未支給年金を受け取れる旨が規定されています。

自己の名で受け取れるということは、相続財産ではないということを意味するので、相続放棄をしていても問題なく受け取れます。

なお、生計同一の判断基準としては、

◆住民票上の住所が同じ

◆別世帯ではあっても住民票上の住所が同じ

◆住民票上の住所が別であっても生活費などの経済的援助が行われていると「認められる」場合

などがあります。

したがって、受給者と住民票上の住所が別で経済的援助を受けていたことなどを証明できなければそもそも未支給年金を受け取れません。

遺族年金

遺族年金は、配偶者や子の生活保障のために支給され、これらの者が直接受け取るものなので、相続放棄によっても影響を受けることはありません。

国民健康保険、健康保険組合などから支給される葬祭費、埋葬料など

受取金額は各自治体の条例により異なりますが、一般的に5万円前後が多いです。

葬祭費などは被相続人ではなく、喪主などの相続人に支払われるものであるため、相続財産とはなりません。

香典、弔慰金

香典や弔慰金は遺族(主に喪主)に対する贈与と考えるので、相続放棄は関係ありません。

4.注意を要する財産

高額医療費還付金

高額医療費の還付金を受け取る権利は世帯主にあります。

したがって、被相続人が世帯主であれば、相続財産となり相続放棄をすると受け取れませんが、被相続人が世帯主でははなければ受け取っても相続放棄できます。

死亡退職金

死亡退職金は、だれが受取れるかは勤め先の退職規定に従うことになりますので、まずは就業規則などを確認する必要があります。

受取人の定めがない場合や、あっても被相続人本人が受取人となっている場合は、相続財産となり、相続放棄をすると受け取れません。

5.まとめ

相続放棄をしても受け取れるもの、相続放棄をすると受け取れないものをみてきました。

いずれかの判断は、その財産が「相続財産にあたるかどうか」により左右されます。

ただ、受け取れないものを受け取ったからといって、当然に相続放棄の効力が覆るわけではありませんし、相続放棄の申立てができなくなるわけでもありませんが、受け取ってしまった場合は適切に管理、保存しておく必要はあります。

「間違って受け取ってしまった」

「受け取れると勘違いして受け取ってしまった」

といった場合は、専門家に相談することをオススメします。

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