
今では海外に相続人がいることは珍しくなくなってきました。
実際、相続手続きのご依頼を受けると、そのような場面に出くわすことがあります。
ただ、遺産分割は相続人全員で行う必要があり、それはたとえ相続人が海外にいたとしても同様です。
日本にいる相続人と同じように、その者が相続人の1人であることを証明するためには、戸籍謄本が必要になってきますが、では、海外に移住した者の戸籍謄本はどうやって取るのか、そもそも取れるのか、について以下で解説いたします。
1.外国人と婚姻したら戸籍はどうなる?
海外在住する理由の典型例としては、国際結婚でしょう。
では、国際結婚すると、日本人の戸籍はいったいどうなるのか。
日本人が外国人と婚姻した場合の戸籍謄本ですが、日本人配偶者を筆頭者とする戸籍が新たに編成されます(ただし、婚姻前からもともと戸籍の筆頭者であれば、新しく編製されることはありません)。
戸籍には日本人配偶者の身分事項欄に、外国人配偶者の情報(氏名、生年月日、国籍)が記載されます。
あくまで外国人配偶者の情報が記載されるだけで、外国人配偶者が日本人配偶者の戸籍に入ることはできません。
2.帰化した場合は
日本人配偶者が外国籍を取得し帰化している場合は、日本国籍を離脱します。
離脱すると除籍となり、現在の戸籍謄本を取得できなくなります。
戸籍が取れないから相続手続きができなくなる、というわけではありません。
その場合は、「宣誓供述書」(※)を作成し、現地の公証人に認証してもらう必要があります。
(※自分が故人の相続人であることや、その署名が本人に間違いないことを証明する内容のもの)
3.名前はどうなる?
日本人が外国人と結婚したとしても当然に氏は変わりません。
外国人の氏を名乗りたければ、婚姻の日から6か月内に、氏の変更届け出をすることによって名乗ることができます。
たとえば、山田ようこさんがマイケル・スミスさんと結婚した場合、婚姻6か月内であれば役所に届けるだけで氏を「スミスようこ」とすることができます(氏を変更したくなければ何もしなければよいです)。
ただ「スミス」は必ずカタカナ表記となります。
戸籍の記載上、英語表記は認められません。
一方、婚姻の日から6か月を経過している場合は、家庭裁判所の許可が必要になります(よほどのことがない限り、許可されます)。
家庭裁判所の許可を得たうえで、役所にその許可審判書をつけて氏の変更を届出れば、戸籍上の記載も変更されます。
4.海外から戸籍謄本を請求、取得するには
上述のとおり、たとえ海外に在住していても、日本国籍を有している限り、日本で戸籍謄本を取得できます。
その取り方ですが、日本にいる場合と異なるところはありません。
1つめは戸籍に記載されている相続人が海外から自ら戸籍謄本を取得するには、本籍地の市区町村に郵送で請求し、取得できます。
2つめとしては、日本国内にいる親族に取得してもらった方が手っ取り早いかもしれません。
後者の方法であれば直接役所に郵送請求する場合に比べ、手元に早く届く可能性が高いです。
配偶者や直系血族(親、子、孫)であれば本人の委任状がなくても取得できます。
5.海外在住者の住民票や印鑑証明書は取れる?
戸籍は取れる、では、住民票や印鑑証明書はどうか。
いずれも相続手続きには必要となる書面です。
これらは日本に住民登録がなければ、取得できません。
代わりに、在留証明書、署名証明書といった書類が必要となりますが、取得には時間がかかったり、手間も一段と増すので、急いで準備する必要がある場合は注意を要します。
6.まとめ
日本国籍がある限り、海外に在住していても戸籍謄本を取得できます。
海外から取り寄せる場合には時間と手間がかかりますので、余裕を持って行動する必要があります。
海外から自分で取るよりも日本にいる家族に取ってもらう方が早いため、場合によっては家族に取ってもらう方がいいでしょう。
いずれにしても、ただでさえ相続手続きは煩雑な手続きですが、相続人の中に海外在住者がいる場合には、その負担は一段と増すので、専門家に相談することをオススメします。