第三者への遺贈の際に注意すべきポイント

1.第三者への遺贈

お世話になったり、献身的な介護を受けたため、相続人以外の第三者に特定の財産を譲渡したい、遺言を残して遺贈したいと考えることはあると思います。

たとえば、財産の内、不動産はお世話になった友人に、預金は独立して別の家に住んでいる子にそれぞれ遺したいといった場合です。

当然、友人は相続人ではありませんので、いざ相続が開始してしまうと友人に財産を遺すことができません。

そこで、自分の死後、親族や友人など相続人以外の者に財産を遺す方法として、遺言による贈与、「遺贈」があります。

そして、相続人以外の第三者への遺贈には次のとおり、留意すべきいくつかのポイントがあります。

①遺留分の問題

他の相続人との関係で問題となるのが遺留分です。遺留分とは兄弟姉妹を除く法定相続人に保証された最低限の相続分です。

 

詳しくは<遺留分の放棄とは?相続放棄との違いは?>

 

まず、遺留分を侵す内容の遺言をすることはまったく問題がなく、法的に有効です。

自己の意思で財産の何を、だれに帰属されるかを指定することは当然の権利なのです。

第三者がそれを否定、否認するようなことでもありません。

あくまで、のちのち相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性がある、というだけです。

請求されなければ何もないのです。

また、遺留分侵害額請求権は時効により消滅します。

遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間、または相続開始の時から10年間で時効消滅します。

したがって、遺言書で特定遺贈を行う際は遺留分には当然、配慮、留意する必要がありますが、それをもって

「遺言はやめたほうがいいのではないか」

「遺贈できないのではないか」

などと考えなくてもよいのです。

②税金がかかる

第三者への遺贈の場合、当然と言えば当然ですが、いくつかの税金がかかります。特に不動産を遺贈する場合が中心です。

◆相続税が課税される

第三者への遺贈は贈与税と思われそうですが、実は相続税が課税されます。

基礎控除の範囲内であれば課税されません。ただし、基礎控除額を求める際の法定相続人の数には受遺者は含みません。

◆不動産の特定遺贈は不動産取得税が課税される場合もある

第三者への遺贈は原則、不動産取得税がかかりますが、第三者への遺贈であっても、「包括」遺贈の場合は不動産取得税はかかりません。

なお、包括遺贈とは、財産の全部もしくは割合的持分を遺贈することで、特定遺贈とは、「〇〇の不動産」といったように目的財産を特定している遺贈のことをいいます。

◆小規模宅地等の特例は使えない

第三者は対象外です。

仮に被相続人と同居していたとしても適用を受けることはできません。

◆2割加算あり

1親等の血族および配偶者以外の者への相続、遺贈は相続税が2割加算されます。

代襲相続ではない孫、兄弟姉妹、甥、姪、遺贈を受けた第三者などです。

それらの者への相続、遺贈となれば、配偶者や子など近親の相続人に比べ生活保障を考える必要性が薄れるためより多くの税を課しても問題ないであろう、という考え方です。

◆登録免許税が割高

登記にかかってくる税金として登録免許税があります。

その税率ですが、第三者への遺贈登記は不動産の固定資産税評価額の2%がかかります。仮に遺贈する不動産が1000万円の評価額とすると、登録免許税は20万円となります。

③遺言執行者の指定

遺贈者が死亡し遺言の効力が生じたあと、実際に遺言内容を実現するため遺贈の目的物の引き渡し、つまり遺言の執行をしていくことになります。

遺言の執行は遺贈義務者が行うことになります。この遺贈義務者とは相続人全員のことです。したがって、受遺者と相続人の関係が良くない場合は、協力してくれない可能性があり、遺言内容を実現できないおそれがあります。

そこで、そのような事態を回避するためには必ず遺言執行者を遺言で指定しておくべきです。

 

詳しくは<遺言を実現させる遺言執行者とは?そのメリットや権限>

 

指定しておけば、その執行者が遺贈の目的物の引き渡し義務、執行義務を負うことになりますので、他の相続人の協力、関与は不要となり、執行されないというリスクもありません。

④登記手続きが面倒になる

不動産の遺贈であれば、最終的には被相続人名義から受遺者名義に名義変更する必要がありますので、登記手続きを行うことになります。

相続登記は相続人単独の申請によって名義変更できます。

一方、第三者への遺贈の登記手続きは、移転の原因が「相続」ではなく「遺贈」となります。

遺贈登記は受遺者と遺贈義務者の共同での登記申請でなければなりません。

なお、令和5年4月からは相続人に対しての遺贈に限っては、移転登記の原因が遺贈であっても単独申請可能となりました。

遺贈義務者として、相続人全員の協力がないと名義変更ができません。

しかもその全員の実印と印鑑証明書が必要になります。

遺贈をこころよく思っていない、不満であるとして、相続人の一人でも協力してくれない場合は名義変更できず、最悪、裁判に発展する可能性もあります。

ただし、前述のとおり遺言執行者を選任していれば、相続人の関与は不要となり、受遺者と遺言執行者と共同で登記申請できます。

 

遺贈による登記について詳しくは<申請人は?必要書類は?遺贈による所有権移転登記の解説>

 

2.まとめ

相続人以外の第三者に自分の財産を遺贈することはもちろん可能です。

その場合、以上のとおり留意すべき点がありますので、遺言書を書く場合は意識しておく必要があるでしょう。

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