
1.遺言検索システム
自筆証書遺言は簡便で手軽に作成できる遺言書として、ここ最近は特に利用されている感がありますが、
・保管場所の問題
・相続人に発見されずに相続人が遺産分割協議を終えてしまうといったリスク
・遺言内容の解釈や遺言能力などをめぐって相続人間のトラブルになるリスク
・遺言検認の手間
など、デメリットもいくつかあります。
なお、法務局における自筆証書遺言書の保管制度について詳しくは<法務局で遺言書を保管してくれる?遺言書保管制度とは>
そこで、もう1つの遺言作成方法である公正証書遺言。
当事務所でもオススメしている作成方法です。
この公正証書遺言、作成後に正本と謄本各1通が交付されますが、
・遺言者が遺言書の場所を伝えずに死亡したため見つからない
・遺言書はあったが紛失してしまった
・公正証書で遺言が作成されたかどうか不明
・貸金庫に入れられているため確認できない
などで公正証書遺言を発見、確認できないといったケースも珍しくありません。
確認、発見できない場合はどうすればよいか・・・。
検索、照会できれば便利ではないか・・・。
このような声に応え、できたのが「遺言書検索システム」といわれるものです。
昭和64年(平成元年)1月1日以降に作成された公正証書遺言については、遺言者の氏名や作成年月日などの遺言の情報(遺言の内容は除く)をデータベース化しておき、遺言検索システムを利用することにより遺言書を検索し、照会を受けることができます。
この制度により公正証書遺言の有無や保管されている公証役場が分かるため、遺言が見つからない、あるかどうか分からないといった場合には利用をオススメします。
2.どこに申請する?
上述のとおり遺言者の氏名や作成年月日などの遺言の情報(遺言の内容は除く)はデータベース化されているため、照会を申請する公証役場は全国どこでも問題ありません。
実際に公証役場に行って申請する必要があるので、郵送申請や電話での検索、照会はできません。最寄りの公証役場に申請すればよいでしょう。
なお、昭和64年(平成元年)1月1日以前に作成された公正証書遺言については、作成した公証役場で確認する必要があります。
3.だれが申請できる?
だれでも検索、照会できるわけではなく、申請人は一定の者に限定されています。
遺言者死亡後
遺言者の死亡後(遺言の効力が発生する)においては以下の者が申請できます。
◆相続人
相続人は当然申請できます。
◆利害関係人
利害関係人としてはその遺言で贈与を受ける「受遺者」や遺言内容を実現する者である「遺言執行者」が代表的です。
◆それらの代理人
相続人や利害関係人から委任を受けた代理人です。
遺言者生存中
遺言者が生存している場合、遺言書は秘匿性が高いため申請人は遺言者本人に限られます。
どのような事情があっても遺言者本人以外が検索、照会することはできませんので、たとえ子や配偶者などが推定相続人(相続が発生したときに相続人となる者)であることを証明したとしても認められません。
4.必要書類は?
では、遺言者死亡後、公正証書遺言の照会を行うに際してなにが必要となるのかですが、申請人と遺言者の関係性を示し、申請権限を有する者かどうかを証明する必要があるため、以下の書類を提出します(場合によっては他にも必要な書類があるかもしれませんので、事前に公証役場に確認しておくことです)。
・遺言者の死亡の記載ある除籍謄本
・申請人が遺言者の相続人であることを証する戸籍謄本等
・申請人が利害関係人であることを証する書面
遺言執行者であれば家庭裁判所発行の遺言執行者選任審判書
受遺者であれば遺言書の写しなど
・本人確認資料(運転免許証など)
・印鑑
・委任状(代理人が申請する場合)
この場合は委任者の印鑑証明書が必要になります。
5.手数料は?
検索、照会だけであれば手数料はかかりません。無料で利用できます。
公正証書遺言の謄本を請求する場合は手数料がかかります。
6.遺言書の存在が確認されたら
検索、照会の結果、公正証書遺言が作られていたことが確認されると、以下の事項を記した照会結果の通知書が発行されます(「該当なし」となればその旨を記載した書面を発行してくれます)。
・作成年月日
・証書番号
・作成した公証役場の住所、連絡先
・作成した公証人
作成が確認でき、遺言書交付を希望するのであれば、実際に遺言書原本が保管されている公証役場に謄本交付請求することになります。
謄本の手数料は1枚あたり250円です。
この公正証書遺言謄本ですが、2019年4月1日から郵送での請求、受領が可能になりました(手順や費用などの詳細は各公証役場にお問い合わせください)。
7.まとめ
以上、公証役場による遺言検索システムの解説でした。
遺言者存命中は、遺言者本人しか照会できませんが、遺言者死亡後、公正証書遺言の有無を確認したい場合や交付を受けていた公正証書遺言を紛失した場合に便利な制度です。
無料で利用できるため、
「遺言書を作ったという話しを聞いたことがあるが確かではない」
「遺言書があったはずだが見つからない」
といったような場合は、まずは照会してみることをオススメします。