相談事例
私は父の作成した遺言の遺言執行者になっています。父は数か月前に亡くなったのですが、いざ遺言の執行といっても何をすればいいのか全く分かりません。
いっそのこと専門家の方に手続きを全て任せたいのですが、そのようなことは可能でしょうか?
1.遺言執行が困難なときは
遺言内容を迅速に実現させるために、遺言書で遺言執行者を定めておくことがあります。
遺言執行者について詳しくは<遺言を実現させる遺言執行者とは?そのメリットや権限>をご覧ください。
ただ、遺言執行はかなりの重労働を伴う場合があります。個々に事情はあるでしょうが、遺言執行をスムーズに、とはいかないことがあります。
「まず何から手を付けていいか分からない・・・」
「忙しくて、すぐには動けない・・・」
「やってはみたが、難しい」
このような場合は、専門家に依頼することをオススメします。
ただ、遺言執行を第三者に任せることができるのか、任せてもよいのか、遺言に反するのではないか、と思うところですが以下で解説します。
2.遺言執行を第三者に頼める?
自分では遺言執行ができそうもないので、手続きを第三者に任せたい。
遺言執行者が第三者に執行を委任することを「復任権」といいますが、相続法改正前は遺言執行者の復任権については、
・やむを得ない事由(典型は病気)がある場合
・遺言に別段の定めがあること(遺言で第三者に委任できる旨が書いてある)
のいずれかでなければ認められませんでした。
ただ、そのような限定的な場面でしか専門家などの第三者に手続きを任せられないとなると、迅速で正確な遺言執行が期待できないケースも多々ありました。
そこで、相続法が改正され、
・遺言執行者は自己の責任において任務を第三者に任せることができる
・ただし、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときはその意思に従う
との規定ができました。改正により原則、第三者に任務を行わせることができるようになったのです。
なお、相続法改正前においては、遺言書作成時に遺言執行者に復任権を与える条項を盛り込むことにより、やむを得ない事由がなくても第三者に遺言執行を任せることができました。
上述の、「遺言者が遺言で別段の意思を表示したとき」にあたるためです(専門家が関与して作成された遺言書は、そのような条項が入っていることが一般的です)。
いずれにしても法改正により、遺言書にあらかじめ復任権条項がなくても第三者に遺言の執行を任せることが可能となりました。
3.いつからの遺言が対象?
注意点としては、2019年7月1日以降に作成された遺言書が対象となります。
それ以前に作成された遺言書は改正前の規定が適用されますので、第三者に任せるためにはやむを得ない事由があるか、もしくは遺言書にあらかじめ遺言執行者に復任権を認める条項が必要となります。
もっとも、改正前の遺言であっても登記や預貯金解約など個々の手続きを個別に委任することはもちろん可能です(専門家を履行補助者として使う)。
改正前においては、遺言執行者は第三者に全面的な(地位の)委任は当然にはできない、ということです。
4.まとめ
上述のとおり、相続法改正によって原則と例外が逆転した格好です。
したがって、遺言書に復任権を与える旨の条項がなくても、遺言執行者は第三者に手続きを全面的に任せることが可能となりました。
当然、弊所も遺言執行者の方からのご依頼で遺言執行手続きをすることができます。お手伝いできる場面がより広く、より増えたことになりますので、お気軽にお問い合わせください。
詳しくは<遺言執行のご相談の方へ>をご覧ください。