相談事例
亡くなった父が、私に土地を相続させる遺言書を作成していたのですが、遺言書作成後に対象の土地が分筆され、分筆登記がされています。
対象の土地の地番が1番1(300㎡)だったのですが、今は1番1(200㎡)と1番2(100㎡)の2筆になっています。
この度、この遺言書を使って相続登記をしたいのですが、どちらの土地も私名義に相続登記が可能でしょうか。
それとも、遺言書の記載のとおり1番1の土地だけしか相続登記ができないのでしょうか。
1.遺言書作成後に分筆は可能?
遺言書作成後に対象の土地が分筆(※)されることは珍しいことではありません。
(分筆とは、1個の土地を2個以上に分割することで、分筆すると分筆された土地にはあらたに地番がつけられ、独立した土地となって登記の対象となります)
当然、遺言者が死亡して遺言書の効力が発生するまでは、遺言の対象の財産も遺言者の財産であるため、どのように扱おうが自由です。何ら制約されるものではありません。
したがって、遺言書作成後であっても分筆は可能です。
2.日付を見比べる
では、いざ遺言書の効力が発生し、その内容どおりに相続登記をするとした場合、
「1番1の土地しか相続登記ができないのか」
それとも
「1番1と1番2の2筆の土地について相続登記ができるのか」
ですが、この場合、1番2も含めた2筆の相続登記が可能です。
その際に、まず遺言書の作成日と分筆登記がされた先後を確認する必要があります(登記簿を見れば分筆登記がされた日付が載っています)。
遺言書作成後に分筆
遺言書には作成日付が書かれていますが、その作成日付の後に分筆登記がされているのであれば、遺言者が300㎡の土地を相続させる意思であったと読み取れます。
つまり、1番1と1番2の土地は元々同じ土地であったものなので同一性があり、300㎡を取得させる意思は変わらないため、遺言書に書かれている1番1の土地から分筆してできた1番2の土地についても遺言の対象の財産と扱われるのです。
分筆後に遺言書作成
一方、分筆登記の後に遺言書が作成されている場合で、1番1の土地しか書かれていなければ、1番1の土地だけしか相続登記できません。
すでに土地が2つある状態で、あえて1番1だけを特定しているのであれば、その土地だけを遺言の対象にしていると判断できるからです。
3.遺言の内容と矛盾、抵触はしない
遺言内容と矛盾、抵触する行為によって遺言を撤回したとみなされることがあります。
しかし、分筆は1つの土地を2つに分割しただけなので、遺言の内容に矛盾する処分行為とはされません。
もっとも、分筆後の1番2の土地を売却していれば、その部分については遺言を撤回したとみなされるので、1番1しか相続登記ができないのは言うまでもありません。
4.まとめ
遺言書作成後に財産が変動したり、表記が変わったりすることは珍しくありません。
遺言書作成後の財産の変動について詳しくは<遺言の書き換えが必要?遺言書作成後に財産が変動した場合の上手な対処法>
そして、遺言書作成後に対象の土地について分筆登記がされていても、その遺言書を使って分筆後の土地も含めた相続登記が可能です。
ただし、中には「作成当時の遺言書では対応できなくなっている」といったケースもあるため、遺言書の定期的な見直しをオススメします。
場合によっては、現状に沿った遺言書の作り直しも検討すべきでしょう。