1.後継ぎ遺贈とは
後継ぎ遺贈、という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
跡継ぎ遺贈とは、遺言で、
「Aに▲▲の土地を遺贈するが、Aが死亡した後はBに▲▲の土地を遺贈する」
といったように、遺言者がさらに第2受遺者(もしくはさらに第3、第4と)を指定しておくことをいいます。
このような遺言は、実務上「後継ぎ遺贈」といわれています。
2.予備的遺贈とは異なる
なお、勘違いしやすいですが、いわゆる「予備的遺贈」とはまったく意味が異なります。
予備的遺贈は遺言の効力が発生する「前」に受遺者が死亡している場合の話です。
予備的遺贈について詳しくは<遺言の受取人が先に死亡したら?>
後継ぎ遺贈は遺言の効力が発生した「後」に受遺者が死亡した場合の話です。
3.後継ぎ遺贈はできるのか・・・
後継ぎ遺贈のような遺言がそもそもできるのか、という問題があります。
結論から言って、上記の例でいうと前半部分のAに遺贈すると記載したところは有効ですが、後半部分のBに遺贈すると記載したところは無効になる可能性があります。
まず、前半部分ですが、遺言の効力が発生すると、遺言に書かれた財産の所有権は確定的に受遺者(A)に移ります。
Aのものであるなら、Aが死亡すればAの相続人に相続されます。
また、Aがその財産についてAの意思で処分をすることも、だれかに遺言を残すことも当然、自由です。
しかし、それを遺言者の意思によって、第2受遺者(次世代)まで定めることができるのか、遺言の効力が発生した後はAのものであるのに、Aの意思を無視して、そのような指定ができるのか、といった問題が出てきます。
まず、このような遺言ができる、といった法律上の規定がそもそもありません。
実務上においても、有効である、いや無効だ、といった争いがあるのですが、無効とする考え方が有力、一般的です。
いずれにしてもそのような遺言は無用の混乱を招きますし、トラブルの元にもなります。
もし、後継ぎ遺贈のようなことを望むのであれば、家族信託の方法(いわゆる後継ぎ遺贈受益者連続信託)を活用すれば、同様の効果を得ることができます。
遺言者の意思で、あらかじめ決めた人に連続で、複数世代にわたり財産を承継させることができます(ただし無制限、永久に数世代先に承継させることはできません。信託法上、限度があります)。
詳しくは<自宅を後妻の次は実子に相続させる方法は?後継ぎ遺贈受益者連続信託>
また、自宅不動産であれば、配偶者居住権を利用して似たような効果を得ることもできます。
詳しくは<再婚相手死亡後に実子に自宅を相続させるには?配偶者居住権の活用事例>
4.まとめ
大事な財産の行くすえを自分で指定しておきたい、といった希望。
その希望を叶えようと後継ぎ遺贈をした。
しかし、後継ぎ遺贈についてはできるといった法律の規定はありません。実際、有効性に争いがあるところで、無効となる可能性が高いです。
どうしても、たとえば先祖代々の土地を直系の子や孫、その先の世代にまで守っていってほしいと考えているのであれば、家族信託を検討、活用するとよいでしょう。