1.本人以外でも口座取引はできる?
認知症などで判断能力が低下し口座取引ができなくなる、というケースは珍しくはありません。
もちろん、本人以外の者が預貯金からお金を引き出したりすることはできません(事実上、家族が管理しているといった場合も多いですが)。
成年後見制度の利用を検討してもよいかもしれませんが、差し当たって成年後見人を選任するまでは考えていない、といった場合も。
ただ、口座取引は本人に代わってある程度の範囲内で行いたいといったニーズもあります。
その場合、本人以外の者が口座取引を行うことができる制度として、代理人登録制度(名称は代理人カード制度や家族カード制度など、金融機関によって異なります)があります。
2.代理人登録制度とは
代理人登録制度とは、本人自らが銀行に届出ることにより、本人以外の者(基本的に一定の範囲の親族)が、本人に代わって口座取引ができる制度です。
本人自ら対象の金融機関に届出る必要があるので、当然、判断能力が低下していないことが前提です。
また、届出後であっても本人の判断能力が低下した場合には利用が停止される場合もあるので要注意です。
3.代理人は何ができる?
代理人は何でもできるわけではなく、基本は以下の行為に限定されます(金融機関によっては異なる場合もあるので、詳細は要確認)。
・預貯金の出入金、振込み手続き(ただし、金額については制限の設定あり)
・ローン返済取引
・本人情報(電話番号、住所など)の変更届出
4.登録には何が必要?
金融機関によって必要なものは異なる場合もありますが、以下のものを用意し、本人と代理人が一緒に金融機関に行って手続きをすることになります。
・通帳
代理人取引の対象となる口座の通帳です。
・本人の届出ている印鑑
現在、本人が金融機関に届出ている印鑑です。
・代理人が今回届出る印鑑
代理人が今後使用する届出印です。本人の印鑑とは違う印鑑である必要があります。
・本人、代理人の本人確認書類
運転免許証等など顔写真のある公的証明書になります。
顔写真のない公的証明書(健康保険証など)の場合は、複数種類が必要となることもあるので要確認です。
・キャッシュカード(代理人カード)発行手数料
カードを発行してもらうのであれば、その発行手数料がかかる場合があります。
・本人と代理人の関係性の分かる書類
代理人は一定の範囲の親族(三親等内など)である必要があるので、そのことを証明する戸籍謄本などを準備することになります。
5.後見制度や家族信託も検討
代理人登録制度も万能ではないので、別途、家族信託や後見制度の検討をしてもよいかもしれません。
ただ、本人の判断能力が低下したために契約等ができなくなる場合もあるので、早めの対応をオススメします。
任意後見制度については<将来の不安に備える任意後見契約とは?手続きの流れやポイント>をご覧ください。
家族信託については<将来の認知症に備えるには?後見制度との違いは?家族信託の解説>をご覧ください。
6.まとめ
本人の口座からお金を引き出したい、との場面は少なくありません。
その場合、代理人登録制度を利用してもよいかもしれません。
ただ、あくまで金融機関のサービスによるものなので、金融機関ごとで取り扱いが異なります。
また、家族信託の受託者や後見人のように、様々なことができるわけではないので留意しておく必要があります。