相続した不動産、固定資産税はだれが負担?

1.固定資産税の負担者は?

相続開始後にかかってくる費用として、固定資産税が挙げられますが、その支払いをだれが負担するのか、といった問題があります。

遺産分割協議が成立すれば、不動産を相続した相続人が当然、負担することになるでしょう。

ただ、遺産分割協議が成立するまでに納付期限が到来してしまうことは珍しくありません。

たとえ、所有者である被相続人が死亡していても、また、遺産分割協議が未成立のため、だれが相続するか分からない不動産であっても、固定資産税は否応なくかかってきます。

相続人が決まっていないからといって、税金を滞納することは許されません。

では、だれが負担すればよいのか。

一般的には以下の2つのパターンが考えられます。

①遺産分割協議が成立するまで、実際に相続財産を管理している相続人がすべてを負担すればよい

②遺産分割協議が成立するまで、各相続人が法定相続分にしたがって負担する必要がある

2.遺産分割成立前の固定資産税負担者

遺産分割がまとまった後であれば、実際に相続する相続人が負担すれば済みます。

問題は、遺産分割が成立する前に納付期限が来てしまう場合です。

この場合、遺産分割がまとまる前に相続人の1人(代表相続人など)が、不動産の固定資産税を全額負担することがありますが、

・相続財産の管理者(もしくは相続人代表者)がいったん立替え、その後、各相続人に対し法定相続分にしたがって請求できる

もしくは

・そもそも相続財産から支払ってしまう

ということが、まずは考えられます。

以上の考え方を前提に、民法885条は、

「相続財産に関する費用は、その財産から払うべき」

と規定しています。

遺産分割未了のなかで発生した固定資産税は相続財産から生じた費用、つまりは「相続債務」となり、各相続人が法定相続分の割合で負担すべきものになります。

したがって、全額負担した相続人は他の相続人に対して、自己の負担部分を超えた金額について返還請求をすることができます

なお、遺産分割成立前に発生した固定資産税について、負担者や負担割合などは遺産分割で自由に決めることができるので、決めた場合はその内容にしたがうことになります。

相続財産から支出したら?

固定資産税を特定の相続人の財布からではなく、相続財産から(預貯金・現金など)支払った場合は。

法定相続人が、法定相続分の割合で各自固定資産税を負担するのであれば、相続財産である預金から引き出して支払っても結果的に同じことです。

その分、相続財産が減少し、各人の取得分が減るだけです。

ただし、預金を自由に引き出せる状態であったとしても(口座凍結されていないとしても)、勝手に預金を引き出すことはトラブルの元になるため、他の相続人の同意がないのであれば、基本的にはやめておくべきです。

3.ほかに相続財産に関する費用は?

ほかに「相続財産に関する費用」としては以下のものが挙げられます。

◆家屋の必要な範囲内での修繕費

雨漏りなどがイメージしやすいでしょう。

しかし、必要な管理を超えた費用、たとえば不動産の価値が増加するような増改築にかかった費用やリフォーム費用などは、もはや「管理費」とはいえないため他の相続人に(当然に)費用を請求できません。

◆火災保険料

◆電気、ガス代など

4.まとめ

相続開始後にかかってくる支払いの中では、まずは税金、特に固定資産税が思い浮かぶのではないでしょうか。

被相続人が不動産を所有していれば、固定資産税がかかってきます。

相続の発生した後の固定資産税や相続財産に関する費用は、だれが負担するかについては、まずは相続人間での話し合い、調整になることが多いです。

しかし、遺産分割協議などの調整がつく前はどうなるのか。

判断に迷った際は、専門家に相談することをオススメします。

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