自宅を相続したら残った住宅ローンはどうなる?団体信用生命保険とは?

自宅を購入する場合、通常は住宅ローンを組むと思います。

では、住宅ローンが残った不動産を相続したら。

住宅ローンが完済される前に所有者が亡くなり、相続が開始した場合、相続人は不安に思うのではないでしょうか。

何百万円、何千万円のローン、借金を背負うことになってしまうのではないか、と。

1.住宅ローンも相続する

相続が開始すると、相続人は、被相続人の権利や義務のすべてを承継します(なお、一身専属的な権利義務は相続しません。詳しくは<相続されない権利や義務はある?一身専属権とは>)。

当然、プラスの財産、マイナスの財産問わず相続することになります。したがって、住宅ローンも相続の対象となります。

借金を相続したくないのであれば、相続開始後3か月内なら相続放棄を選択することになります。

2.住宅ローンが帳消しになる場合とは

自宅不動産を相続した場合、住宅ローンも相続します。

借金だけの相続放棄は認められません。

もっとも、住宅ローンが帳消し、チャラになるケースもあります。

住宅購入時、通常、ローン契約者は「団体信用生命保険」(略して団信)に加入します。

この保険は、住宅ローンの返済に特化した保険です。

この保険に加入しておけば、ローン契約者に死亡や高度障害など万一のことがあった場合に保険金がおり、残った住宅ローンは保険金から返済されます(金融機関が保険会社から保険金を受け取ります)。

住宅ローンは通常、額が大きいため、残された家族がそれを払い続けることは簡単ではありません。

ローン不払いによって、せっかく買ったマイホームを出ていかなければならない、といった事態も起こりえます。

団信はそのような不測の事態を避けるための保険であり、残された家族が経済的に困らないための保険です。

この団信は基本的にローン実行の条件とされているため、通常は加入している思ってよいでしょう。

ただし、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して行う長期固定金利の「フラット35」では団信(機構団信といいます)の加入は任意です。

民間金融機関でのローンは基本的に強制加入ですが、加入の有無が気になるのであれば借り入れた金融機関に問い合わせて確認してみることです。

3.団信の種類、保障内容

団信の種類、保障内容としては、主に次のものがあります。

通常の団体信用生命保険

死亡・高度障害状態になった場合に保険金が支払われます。

三大疾病保証付き団体信用生命保険

死亡・高度障害状態に加え、三大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態になった場合に保険金が支払われます。

八大疾病保証付き団体信用生命保険

死亡・高度障害状態に加え、八大疾病で所定の状態になった場合に保険金が支払われます。

以上のほかにも様々な特約を加えたものがあります。当然、保障内容が厚くなればなるほど、保険料は増えていきます(毎月の金利に上乗せされる)。

また、「所定の状態」がなにを指すかは金融機関や契約内容によりそれぞれ異なりますので確認しておくことです。

4.ローン完済後の流れ

ローンが保険金で完済された後は、金融機関から抵当権登記を抹消するための書類が送られてくるので、相続人側で対応を取る必要があります。

抹消登記の申請書を作成し、送られてきた書類を付けて法務局に抵当権抹消登記の申請をすれば登記簿から抵当権の記載を抹消できます。

勘違いしやすいですが、勝手に銀行が抵当権を抹消してくれるわけではありません。

詳しくは<相続した不動産に抵当権の登記が設定されているときは>

 

なお、抵当権抹消登記の前提として相続登記が必要になります。

5.課税関係は?

直接相続人が保険金を受取るわけではないため(金融機関が受取る)、みなし相続財産とはなりません。

したがって、団信の保険金については相続人に相続税が課税されることはありません。

また、死亡以外の理由で保険金が出た場合であっても本人に所得税、住民税はかかりません。

なお、保険金で返済された住宅ローンの残高はないものとして扱われるため、相続税の計算において債務控除はできません。

なぜなら、相続と同時に住宅ローンは消滅するため、債務控除の要件である「相続開始時において確実な債務」にはあたらないからです。

6.まとめ

相続した不動産に住宅ローンが残っていても、団信に加入していれば保険金によって完済されます。

フラット35など一部例外もありますが、基本的にはローン借入の時に団信に加入します。

しかし、現金購入であるため団信に加入していない場合もあるでしょう。ローンを借りた場合であっても任意加入だったかもしれせん。

保険に加入していない中で住宅ローンを相続した場合は、不動産の価値や残債額を比較し、場合によっては相続放棄(もしくは限定承認)をするかどうかを慎重に検討する必要があります。

関連記事