自分でできる!相続登記の申請方法や申請書の書き方

相続登記の申請を司法書士に依頼せず自分で行うことももちろん可能です。

弁護士や税理士に依頼しないで、訴訟や税務申告を自分ですることができるのと一緒です。

とはいっても面倒な手続きではあります。ご自分でするとなると手間、時間がかかることでしょう。

以下では、相続登記の申請書の書き方、書き順や申請方法などを解説しますので、ご参考ください。

なお、登記には、

 

①オンライン申請による方法(特例方式含む)

②書面申請による方法

 

があります。

ただし、オンライン申請にあたってはもろもろの準備や機器が必要となるので、一般の方は基本的に書面申請になろうかと思いますので、以下では書面申請による方法を前提にしています。

 


<相続登記申請書の記載例>


1.登記の目的

まずは、タイトルともいうべき登記の目的を書きます。

所有権の全部移転であれば「所有権移転」と、持分全部移転であれば「A持分全部移転」と記載します。

2.原因

どのような原因で、いつ所有権が移転したかを書きます。原因がなければ名義変更はできません。

相続であれば「年月日相続」となり、年月日は戸籍に記載されている死亡日を書きます。

仮に遺産分割協議の結果、相続登記を行う場合であっても、死亡日を書きます。遺産分割協議成立日ではありません。

3.相続人および被相続人の表示

被相続人の氏名と、相続人の住所、氏名を書きます。被相続人は氏名のみで大丈夫です。

相続人(被相続人A)住所Bのように記載します。

被相続人が所有権全部を有していない場合は(持分移転の場合)、移転する持分を氏名の前に記載します。

また、書類に不備があれば法務局から補正の連絡がありますので、そのための電話番号も記載します。

4.添付書面

相続登記は、申請書とあわせて数々の添付書面が必要になります。

 

詳しくは<相続と贈与、その違いは?>

 

住民票や、評価証明書、登記原因証明情報といったように、今回、具体的に何を添付しているかを書きます。

登記原因証明情報とは相続関係説明図、戸籍謄本一式、遺産分割協議書などです。これらはまとめて登記原因証明情報として、ひとくくりにします。

なお、相続登記では権利書(権利証)は不要です。

 

詳しくは<相続による名義変更登記の際に権利書は必要か?>

 

5.申請する法務局、その年月日

管轄法務局の記載と、その申請する年月日です。

6.代理人の表示

司法書士に代理してもらう場合には、その司法書士の情報です。

ご自分で相続登記を行う場合は、表示自体不要ですので削除します。

7.課税価格

登録免許税算出のため、不動産の課税価格を記載します。

課税価格は「固定資産税評価証明書」に記載されている評価額となります。

役所、役場の固定資産税評価証明係(係名は各自治体、役所によって異なります)などで取得します。注意点としては最新の年度のものが必要になります。

なお、毎年4月から5月ごろ届く「固定資産税納税通知書・課税明細書」にも評価額は記載されていますので、それでも大丈夫ですが、こちらも最新の年度のものが必要です。

8.登録免許税

国税として、法務局に収める税金です。課税価格に税率1000分の4をかけます。

たとえば、1000万円の評価額であれば、登録免許税は4万円となります。

 

詳しくは<相続による名義変更登記の際にかかる登録免許税とは?>

 

収入印紙で納付できますので、印紙を貼る用の白紙の紙(印紙貼付用台紙)も申請書にホチキスでとめて、そこに貼付します。

収入印紙は郵便局や法務局で購入できます。

コンビニでも購入できますが、基本的に200円の印紙しか販売していません(仮に4万円貼るとなると、印紙が200枚必要になってしまいます)。

9.不動産の表示

今回移転対象の不動産の情報を記載します。必ず登記事項証明書どおりに記載します。

◆土地なら所在、地番、地目、床面積の順で

◆建物なら所在、家屋番号、構造、床面積の順で

建物には車庫など「付属建物」がある場合もありますので、よく登記事項証明書をみて、記載漏れのないように注意しましょう。

なお、申請前には最新の登記事項証明書を取得して不動産の表示や所有者を必ず確認しておくことです。登記事項証明書はだれでも、どこの法務局でも取得できます。

10.登記の申請先、申請方法

登記申請書を添付書面とあわせて、その不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。(法務局ホームページ)

申請は法務局の窓口に持参はもちろん、郵送でも可能です。

持参の場合は、訂正する箇所があればその場で対応できるよう、申請書に押した印鑑を持っていきます

郵送の場合は、普通郵便ではダメで、書留郵便で送ります。通常はレターパックプラス(赤い方)で送ります。

11.間違いがあると?

申請に不備、間違いがあると、法務局に補正(訂正)に行かなければなりません。

法務局は平日にしか開庁していないため、時間の取れない方はスムーズに対応できない場合もあります。

記載ミスや記載漏れ、添付書類の不足、不備には十分注意することです。

12.書類回収

登記審査は、申請書や添付書面に不備や不足がなければ、各法務局や時期にもよりますがだいたい10日前後で完了します。

登記完了予定日は各法務局のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。

完了した書類を回収に行く場合は、

・申請書に押した印鑑

・身分証明書

・登記申請した際に聞いた受付番号、受付年月日のメモ

を持っていきましょう。

窓口で以下の書面を受け取ってすべての手続きが終了です。

①登記識別情報通知書(従来の権利書)

いわゆる権利書(権利証)です。再発行のきかない一番大事な書面です。

②登記完了証

登記が完了したことを証する書面です。特に重要な書面ではなく、今後も使用することはありません。

③原本還付書面

戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などの原本還付の書面です。

なお、原本は所定の手続きを踏まなければ還付されないため注意しましょう。

還付の手続きとは、申請時に原本に加え、そのコピー一式の提出と、原本と相違ない旨の記載などが必要になります。

郵送での受け取りも可

郵送で完了書類を受け取ることも可能です。

郵送で受け取る場合は、申請時に申請書などとあわせてレターパックプラスを提出しておきます。

登記事項証明書も取得しておく

名義が変更された、登記完了後の登記事項証明書もあわせて取得しておきましょう。住所や氏名など、登記された事項に誤りがないかを念のため確認します。

登記識別情報通知書とまとめて保管しておきましょう。

13.まとめ

相続登記の申請書自体はそれほど難しくありませんが、添付する書面が非常に多いので、書類収集の方に労力を使うことになるでしょう。

また、道路持分など、物件の一部について相続登記漏れすることがまれにあります。

売却時に登記漏れが表面化する場合もありますので、相続登記に際しては、権利書や登記事項証明書の確認は必須です。

不安な方は最初から司法書士に相談、依頼することをオススメします。

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