相続と贈与、その違いは?

相続と贈与の違いはどんなものがあるのでしょうか。

以下では、その違いを解説いたします。

1.相続とは

「相続」とは人の死亡によって当然に発生するもので、相続人は相続を承認するか、相続放棄をするかの選択権が与えられています。

相続人の範囲、順位は法律で決まっています。自分で相続させたい者を選びたければ遺言書を書いておくことです。

 

相続の承認には単純に承認するほかに、「限定承認制度」があります。詳しくは<限定承認とは?そのメリットデメリット>

 

2.贈与とは

「贈与」とは、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)との契約によって、ある物をタダであげる行為です。

当事者の一方的な判断でされるものではありませんが、契約なので、相手方である受贈者を自由に選べます(相続は自由に相続人を選べませんが、遺言で実質選択することはできます)。

口約束でも契約は成立しますが、言った言わないを防ぐためにも契約書を残しておくべきです。

3.税金の違い

受贈者には贈与税、相続人には相続税が課せられます。

なお、相続税、贈与税ともに「連帯納付義務」の規定があります。

連帯納付義務とは、たとえば贈与税を課せられた受贈者が贈与税を支払わない場合、代わりに贈与者が贈与税を負担、納付する義務を負うことです。

場合によっては、財産をタダであげたのに、さらに贈与税を課せられてしまう可能性もあるので注意する必要があります。

以下では、相続税、贈与税の基礎控除や主な特例規定です。

基礎控除

相続税、贈与税ともに基礎控除がそれぞれありますので、その範囲内の金額であれば課税されません。

(1)相続税

◆3000万円+法定相続人の数×600万円まで

たとえば法定相続人が3人であれば、4800万円までは相続税がかかりません。

代襲相続の場合、代襲相続人が3人いれば、その3人全員を法定相続人に含めて基礎控除を計算できます。

(普通)養子も相続人の数に含めることができますが、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

無制限に養子縁組をして基礎控除額を増やし税逃れされないよう、含めることができる人数には制限があります。

ただし、いわゆる連れ子を養子とする場合は税法上、実子とみなされ、人数制限なく法定相続人の数に含めることができます。

なお、相続税が課税される割合は平成29年においては8.3%です。

(2)贈与税

◆1年間(毎年1月1日から12月31日)につき贈与額の合計が110万円まで

110万円までは贈与税がかかりません。

申告も必要ありません。

詳しくは<贈与の活用による相続税の節税(暦年贈与)>

 

その他非課税枠、特例

上記の基礎控除以外にも別途、非課税枠や特例の制度があります。たとえば次のものです。

(1)相続税

◆生命保険・死亡退職金の非課税枠

◆配偶者の税額軽減

◆小規模宅地等の特例など

(2)贈与税

◆夫婦間の居住用不動産の贈与の配偶者控除

いわゆる「おしどり贈与」や「夫婦間贈与」といわれるものです。

詳しくは<夫婦間で不動産を贈与したときの贈与税は>

 

◆相続時精算課税制度

この制度は一般的に課税の繰り延べといわれています。

メリットデメリットがはっきりしている制度でもあります。

詳しくは<贈与の活用による相続税の節税(相続時精算課税制度)>

 

◆住宅取得資金贈与の特例など

税金は贈与の方がかかる

基礎控除額や税率からみても相続よりも贈与の方が税金がかかります。

詳しくは<贈与税早見表と贈与税の計算方法>

 

なお、贈与は受贈者に不動産取得税が課税されますが(相続は相続人に不動産取得税は課税されません)、贈与された不動産に住む場合など一定の要件を満たせば大幅な減税措置が受けられます(結果的に不動産取得税がかからないことも)。

4.登記手続きの違い

不動産の所有権の移転を伴う場合は、相続にしろ、贈与にしろ通常、登記手続きをすることになります(ただし登記は義務ではありませんが、しないことによるデメリットがあります)。

(1)相続登記、その必要書類

不動産を所有していた人が亡くなり、相続による名義変更登記の手続きを行う場合、その不動産の所在地を管轄する法務局に申請をします。

申請する者は、実際に相続し取得する者の単独での申請になります。

必要書類は一般的には次のものです(ただし、相続人が配偶者と子の場合)。

①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

②相続人全員の戸籍謄本

③被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

④不動産を取得する相続人の住民票

⑤当該年度の固定資産税評価証明書(または固定資産税納税通知書)

⑥相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書

⑦相続人全員の印鑑証明書

相続人の順位によってはさらに追加で戸籍謄本が必要になる場合があります。相続人がそもそも1人の場合や法定相続持分で名義変更をする場合は⑥⑦の書面は不要です。

③は、人が死亡すると住民票が取れなくなるのではと思いがちですが、保管期限内であれば「住民票の除票」が取得できます。

相続登記をはじめ被相続人の最後の住所地を証明することが必要な場合はよくありますので、それをもって最後の住所地を証明します。

保管期限が経過したため住民票の除票が取れない場合は、別途、権利書が必要になる場合があります。

詳しくは<相続による名義変更登記の際に権利書は必要か?>

 

そのほかには登録免許税として固定資産税評価証明書記載の評価額の0.4%がかかります(たとえば土地の評価額が1000万円なら、登録免許税は4万円となります)。

コピーを提出すれば登記完了後、上記の書類の原本は返却してくれます。

戸籍謄本一式のコピーは大変ですが、「相続関係説明図」を提出すればコピーをつけずに原本を返却してくれます。

詳しくは<相続関係説明図の書き方、作り方>

 

(2)贈与登記、その必要書類

不動産を生前に贈与した場合の、贈与による名義変更登記はその不動産の所在地を管轄する法務局に申請をします。申請する者は、贈与者と受贈者の共同での申請となります。

なお、贈与者の登記されている住所が現在の住所と異なる場合は、住所変更登記も必要になります。相続では被相続人の登記されている住所が死亡時の住所と異なっていても、住所変更登記は不要です(住民票の除票でつながりを証明できればよいです)。

必要書類は一般的には次のものです。

①登記原因証明情報

②贈与者の印鑑証明書(発行から3か月内)

③贈与者の権利書(登記識別情報通知書)

④受贈者の住民票

⑤当該年度の固定資産税評価証明書(または固定資産税納税通知書)

①の登記原因証明情報は贈与契約書を作成し、それをつければ、別途、登記原因証明情報の作成は不要です。

詳しくは<贈与契約書には何を書く?その書き方、作り方>

 

契約書のコピーを出せば原本は返却してくれます。なお、贈与契約書には200円の収入印紙を貼り割印をします。

②の印鑑証明書はたとえコピーを出していても原本は返却してくれません。

③の権利書(登記識別情報通知書)が紛失などで添付できない場合は、司法書士が贈与者と面談し、その者が所有者本人に間違いないことを確認の上、「本人確認証明情報」を作成することにより権利書(登記識別情報通知書)に代えることができます。

ただし、別途費用がかかります。

そのほかには登録免許税として固定資産税評価証明書記載の評価額の2%がかかります(例えば土地の評価額が1000万円なら、登録免許税は20万円となります)。

5.まとめ

相続と贈与の違いを手続き面も含めて解説いたしました。

生前対策として贈与は使われることがありますが、安易に行わずに、税金の面を考慮し(場合によっては特例など)、検討する必要があるでしょう。

相続は登記以外でも様々な手続きが必要になってきます。

提出先、手続き先も数多くありますので、まずは専門家に相談することをオススメします。

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