注意すべき期限のない相続手続き

相続放棄や相続税の申告など、相続手続きの中には期限が定められているものがありますが、特に期限のない手続きもあります。

「期限がないのであれば、別にいつ手続きをしても構わない」と思うかもしれません。

しかし、期限がないとはいってもその中で注意すべき点もあるため、以下で解説いたします。

1.不動産の名義

まずは土地や建物といった不動産の相続登記。

被相続人が不動産を所有している場合です。

この相続登記にはいついつまでにしなければならない、といった期限はありません。

ただし、それも今のところ、です。

というのは、令和3年4月の法改正で相続登記が義務化されました(施行は令和6年4月1日から)。

義務化により、正当な理由がないのに期限内(3年)に所定の登記をしなければ10万円以下の罰金を取られる場合があることになったので要注意です。

2.銀行預貯金口座の名義

銀行預貯金口座の解約、名義変更手続きも特に期限はありません。

「わざわざ手続きするほどの残高がない」

「お金に困ってないため、そのままにしていた」

「銀行が遠方なため、めんどう」

理由は様々ですが、何年も前に亡くなった被相続人の口座をそのままにしている、といったケースは思いのほかある印象です。

ただし、長期間(10年以上)放置しておくと「休眠口座」とされ、預金保険機構の管理下に置かれる可能性があるので要注意です。

3.自動車の名義

自動車も立派な財産です。不動産は持っていないが、自動車は持っている、といった方も多いことでしょう。

その自動車の相続手続きも法律上期限が決まっているわけではありません。

しかし、被相続人名義のままだと車検を通すことができず、いったん相続人名義に移さなければ売却や廃車などの処分もできません。

自動車の名義変更はそれほど煩雑なものではないため、早々に取り掛かることをオススメします。

なお、その名義変更にあたっては、まずは車検証の所有者欄を確認する必要があります。

所有者欄が被相続人ではなくディーラーや信販会社となっている場合は別途、残ローンの有無を確認する必要があるからです。

残ローンの有無によって以下のように対応方法が変わってきます。

ローンが残っている

いまだローンが残っているのであれば、そのローンは相続人が引き継ぎます。

相続人が引き続き乗らないのであれば当該自動車は引き揚げられ、換価、処分されます。

換価、処分をしてもローンを完済できなければ相続人は当然、残額の支払い義務を負うことになります。

ローンが残っていない

ローンがすでに完済されている、もしくは相続人が完済したため、ローンが残っていないということであれば、所有権留保を解除する手続きを経て、相続人名義に移すことになります。

4.共通のリスク

上述のように、それぞれに放置によるリスク、デメリットがありますが、共通のリスク、デメリットとして挙げられるのが、相続人の認知症です。

手続きを放置しているあいだに相続人が認知症になってしまうと遺産分割もできません。

場合によっては「財産の塩漬け」となってしまうため、相続人に高齢の方がいるのであれば、余裕をもって行動することをオススメします。

5.まとめ

以上の手続きは法律上の期限はありません(ただし、上述のとおり不動産の相続登記については期限が設けられることになった)が、手続きを放置しておくと一定のリスク、デメリットが生じる場合があります。

手続きが遅くなったことにより何らかの不都合が生じることはあっても、早めの対応によって不都合が生じることは普通はない普でしょう。

「いつでもできる」「めんどう」と言ってそのまま放置せず、専門家に相談するなどまずは早めの対応を取ることです。

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