相続はだれに相談すればいい?どこに行けばいい?

1.相談先は慎重に

いざ起きた相続、その相談は一体だれにすればよいのか、どこの事務所に行けばよいのかと迷ってしまうことがあると思います。

相続の手続きは非常に多岐に渡るため、関連、関与する士業や隣接職は数多くあります。

士業でいえば弁護士、税理士、司法書士などですし、保険や銀行、証券などの金融機関、場合によってはファイナンシャルプランナーなども関与してきます。

また、その士業の中でも相続が得意なのか、不動産関係が得意なのか、会社、法人関係が得意なのか、裁判関係が得意なのかなど専門分野が人それぞれ違ってきますので、その見極めも重要になってきます。

そこで見誤ってしまうと、時間もお金も無駄にしてしまうかもしれません。

2.相談するのはだれがよい?

各士業にはそれぞれ特徴がありますが、相続の相談先として主な士業は次のとおりです。

(1)弁護士

弁護士が相続で登場する場面は、やはり遺産の範囲、遺産分割でもめている場合や遺留分を請求する場合などトラブル、紛争を抱えているケースではないかと思います。

協議、話し合いが成立しないのであれば、一切の相続手続きをすることはできませんので、解決策は家庭裁判所での調停、審判手続きとなります。

また、遺言書の有効性や遺産の範囲、評価の方法などに争いがあれば、民事訴訟での話しになってきます。

司法書士はそれらの書類の作成や必要書類の収集は行えますが、実際、代理人となって業務遂行ができるのは弁護士になります。

(2)税理士

相続税がかかってくる相続については税理士の出番となります。

相続税には基礎控除がありますが、基礎控除内でも申告が必要なケースもあります。そのほか準確定申告の問題もありますので、税務関係は税理士です。

遺産の総額が基礎控除額内であれば相続税はかかりませんが、相続税法の改正により平成27年1月1日からの相続については、基礎控除額が以前の6割に抑えられました。

その結果、相続税の対象になった人の割合は改正前までは全体の4%ほどでしたが改正後の現在では8%ほどと約2倍になっています。

その割合は、首都圏などの都市部においてはさらに高いです。

したがって今後も着実に相続税の申告が必要なケースは増えていきますが、相続専門で扱っている税理士はどちらかというと少数派なので、慎重に見極めて相談、依頼するべきです。

(3)司法書士

相続人同士でもめていない、トラブルとなっていない場合や遺留分を巡る争いがない場合、税務申告が不要な場合は司法書士に相談するのがよいと思います。

費用も弁護士に比べると低廉な場合が多いです。

一口に相続といっても相続発生前と後で手続きは大きく違います。前と後で分けると次のようになります。

 

<相続発生「前」の主な手続き>

◆自分の財産を相続人間でもめないよう適切に分配したいので最適な遺言事項のアドバイスが欲しい

◆遺言書の起案、作成

◆成年後見人などの後見業務

◆生前贈与

◆死後事務委任契約

◆家族信託の設計

<相続発生「後」の主な手続き>

◆法定相続人の調査、確定作業

◆相続財産の調査

◆遺産分割協議書や相続関係説明図の作成

◆自宅の名義変更登記(相続登記)

◆住宅ローンが団信で返済されたため抵当権の抹消登記

◆預貯金や株式などの金融資産の遺産整理手続き

◆遺言内容を実現させるために遺言の執行業務

◆相続放棄、遺言書の検認、特別代理人選任など家庭裁判所に提出する書類の収集、作成

◆その他相続の手続き全般

 

以上のものについては司法書士が対応可能です。

ただ、司法書士の中でも、当然相続が得意な司法書士、苦手な司法書士がいます。

3.まとめ

相続人調査や名義変更登記などはご自分ですることもできますが、法務局に行ったり、役所から戸籍謄本を集めたりなど、初めてやる手続きが多いでしょうから、慣れていないとかなり大変だと思います。

相続手続きは基本的に集める書類が膨大で、手続きも煩雑で手間がかかります。また、役所や銀行は基本的に平日しかやっていませんので、忙しい人、働いている人には現実的に難しいです。

それらの手続きを自分でやってみたい、苦にならない人以外は、少しでも面倒だと感じたなら費用面などを考えても司法書士に依頼するとよいでしょう。

なお、信託銀行などでも遺産整理や遺言執行業務を行っていますが、実際に相続手続きを行うのは各士業です。信託銀行が各士業に外注するのです。

そのため、信託銀行自体の報酬に加え、更にそれらの外注費用も乗っかってきますので、報酬額は高額になることが一般的です。