1.遺産分割協議書の作成
遺言書が無い場合、相続財産は法定相続人に法定相続分にしたがって相続されます。
しかし、「法定相続分とは異なる割合で財産を分配したい」「不動産は配偶者が、預金は子がそれぞれ取得したい」など、相続人間で話し合い、実情に沿って柔軟に分けたい場合もあるでしょう。
そのような場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、その合意内容を書面に残すため、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
遺産分割協議自体は口頭でも成立しますが、各種手続きには遺産分割協議書が必要になるため、必ず作成します。
2.遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書は遺言書と違い、書き方は特に法律上決まっているわけではありませんので、手書きであってもワープロ、パソコンで入力していても問題ありません。
一般的な記載内容、記載順としては次のとおりです。
◆タイトルとして「遺産分割協議書」
◆被相続人の氏名や死亡日、最後の本籍地など被相続人が特定できる事項
◆各条項(具体的に取得する財産や取得者など)
◆合意した日付と相続人全員の住所、署名(または記名)
◆各相続人が実印で押印(必ず実印で)
1枚では書ききれず、数枚にわたってしまった場合は複数枚にしても問題はありませんが、各ページの継ぎ目に全員の割印が必要になります。
なお、遺産分割協議は「協議」とは言いますが、実際に相続人全員が一同に会して同じテーブルで行う必要はありません。
順次、持ち回りで遺産分割協議書に署名押印をもらっていく方法でも問題ありません。
売買契約書のように収入印紙を貼る必要はありません。
後日新たに遺産が見つかった場合に備えて「本協議書に記載のない遺産や、後日新たに遺産が見つかった場合は、〇〇が取得する」とする条項を入れておけば協議のやり直しを回避できます。
<遺産分割協議書の記載例>
3.遺産分割証明書
相続人が多数の場合や各相続人の住所地が遠方に分散している場合は「遺産分割証明書」を作成すると良いでしょう。
これは、遺産分割協議の内容について合意したことを証明した書面です。
各相続人がそれぞれ遺産分割証明書に署名押印をするもので、遺産分割協議書のように一枚の紙を回していたのでは時間や労力(相続人が遠方にいるなど)がかかる場合に効果的です。
遺産分割証明書を相続人全員分揃えると、遺産分割協議書と同様の効果があります(ただし1通でも揃わないと全体として有効にはなりません)。
何人かの相続人は遺産分割協議書に署名押印し、一部の相続人は遺産分割証明書であってもそれで相続人全員の署名押印が揃っていればそれらをあわせて、一体として有効となります。
なお、遺産分割協議書を紛失した場合、協議書はそれ1枚しかないため、再度、はじめから相続人全員にもらい直しとなりますが、遺産分割証明書であれば、紛失した相続人の分のみをもらい直せば良いので、万が一紛失した場合でも迅速に対応できることでしょう。
<遺産分割証明書の記載例>
4.遺産分割協議書は1通でよい
遺産分割協議書の通数は相続人の人数分揃える必要はありません。
1通でも問題なく、原本を取得者が所持し、コピーを他の相続人が所持する形でも良いです。
各相続人が原本を持っておきたいなら人数分の通数を揃え、全てに署名し、実印で押印します。
遺産分割協議書に署名押印がされたら、相続人全員の印鑑証明書を付けて各相続手続きを行っていきます。
5.まとめ
遺産分割協議書は各種手続きのために必ず作成しておきましょう。
また、相続人間で「言った言わない」とならないために、証拠保全の意味合いとしても重要です。
上記遺産分割協議書(証明書)の記載例は最もオーソドックスな内容ですが、事案によっては内容、書き方が複雑になる場合もあります。
遺産分割協議書の不備により手続きができないといったことのないように、難しい、分からない、作るのが面倒と感じたのであれば専門家に相談することをオススメします。