遺産分割協議の上手な進め方は?

1.遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は法律上の期限がないとはいえ、速やかに成立させることに越したことはありません。

ただ、夫婦の離婚交渉などと違い、相続人の数は通常複数人に及びますので、合意形成がうまくいかず思いのほか長引くケースもありますが、合意を急ぐあまり、納得のいかない形で成立させることだけはやめておくことです。

むしろ納得がいかなければ思い切って家庭裁判所に調停を申立てた方が、だらだらと協議を続けるよりは家庭裁判所が関与することによって結果的に円滑に進み、遺産分割が成立することもあります。

だれも損はしたくないと考えますし、むしろ得したいと考えるのが通常です。

そのようななかで、多数人が、なんの事前準備もなくただ話し合いを行うよりも次のように確認、検討しながら話し合いを進めると円滑に、上手に進めることができるでのはないでしょうか。

(1)遺言書の確認

遺言書があれば遺産は受遺者に相続されますので、まず最初にすべきことは遺言書の確認です。

自筆証書遺言だと金庫などに入れている場合もありますが、相続人がその存在を把握しないまま遺産分割協議を終えてしまうこともあります。

また、遺産分割協議が成立した後に遺言書が見つかることもあります。

苦労して成立させた遺産分割協議が無駄になってしまうこともあるので、遺言書を書いているのであれば相続人(になる者)に事前にその存在を周知させておくべきです(ただし、知られたことにより改ざんや隠されるおそれもあります)。

なお、2020年7月10日から法務局にて自筆遺言書保管の制度がはじまります。詳しくは<法務局で遺言書を保管してくれる?遺言書保管制度とは>

この制度を利用すれば、改ざんや紛失のリスクを回避できます。

公正証書遺言については、昭和64年1月1日以降に作成されたものは「遺言書検索制度」がありますので活用するとよいでしょう(ただし、遺言者生存中は遺言者本人しか検索、照会できません)。

(2)相続人の確定

そもそも相続人全員の合意がなければ遺産分割協議は有効に成立しませんので、まずは戸籍謄本を集めて相続人を確定させることです。詳しくは<相続人の調査方法、手順、ポイント>

また、相続人でない者を含めた遺産分割は無効になります。たとえば相続分の譲渡人や相続放棄者です。

逆に、相続分の譲受人や、認知された子、包括受遺者を除いて行った遺産分割協議は無効です。

(3)遺産の範囲の確定(遺産分割する遺産の確定)

遺産に何があるか、プラスの財産はいくらあり、マイナスの財産はいくらなのかなどを調査し、漏れがないよう確定させることです。

ただ、マイナスの財産の調査は難しい場合があります。借金などは家族であっても隠しておきたいのが普通だからです。

よくわからないのであれば、信用情報機関に対し照会をしてみることです。詳しくは<被相続人の借金を調べる方法は?>

プラスの財産の調査方法について、詳しくは<自分でも簡単にできる!相続財産の調査方法>

財産の一部分割も可能ですので、不動産については協議し、預貯金は法定相続分で取得する方法もできます。

死亡退職金や遺族給付など、なかには遺産分割の対象にならない財産(受取人固有の財産)もありますので注意を要します。

(4)話し合い

相続人が配偶者と子の場合は比較的スムーズに進みますが、兄弟姉妹が相続人でさらにそこで代襲相続(甥姪も登場)も起きていると登場人物も増え、合意形成が難しくなる場合もあります。

基本的に相続人の配偶者の同席はオススメできませんので、避けた方が良いです。

協議が長引いている間に2次相続が発生して法律関係の複雑化や、思わぬ税負担が生じる可能性もありますので注意しましょう。

自分の主張すべきところは主張すべきですが、各相続人の事情(資力や被相続人との関係性)も考慮しつつ誰がなにを取得するのか、取得する代わりに代償金を支払うのか、ハンコ代は必要なのかなどを総合的に判断すべきでしょう。

また、遺産分割の中で寄与分の主張がされる場合もありますので、その際はあわせて検討する必要があります。詳しくは<一番介護をしたから・・・。寄与分とは?その条件は?>

(5)協議成立し遺産分割協議書の作成、そして署名・押印

協議内容について合意できたら、その協議内容を書面に起こし、遺産分割協議書を作成します。詳しくは<遺産分割協議書の書き方は?遺産分割証明書って?>

そして、相続人全員が遺産分割協議書に署名し、実印で押印します。遺産分割協議書は様々な場面で使うことになりますので、必ず作成しておきます。

紛失に気を付けて各手続きに取り掛かります。

2.まとめ

遺産分割協議は、予想外に早く終わる場合もあり、また、想定外に長くかかってしまう場合もあります。

1人でも合意できなければすべてが成立しません。多数決ではないのです。

したがって、ただ漠然と進めるのではなく、順序よく、効率よく進めていくことです。

遺産分割協議はいっぺんに全ての相続財産について話し合うのが基本ですが、場合によっては合意できそうな部分、財産だけをまず合意しておく「一部分割」も検討するのもよいかもしれません。

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