遺産分割によって相続した債権を債務者に対抗するには?

1.相続した金銭債権は各相続人に当然に分割される

被相続人が第三者に対し有していた貸付債権や不動産賃料債権などの金銭債権は法律上、当然に各相続人に法定相続分にしたがった分割されます。

ただし、次のものは当然に法定相続分にしたがった分割されません。相続人全員での遺産分割手続きの対象になります。

◆預貯金債権

◆株式、投資信託

◆社債、国債

2.法定相続分を超えて取得した場合

遺言や遺産分割協議の結果、被相続人が有していた貸付債権を、自己の法定相続分を超えて取得した相続人は、当然に法定相続分を超える部分を債務者に主張、対抗できません。

たとえばAがXに対して900万円の貸付債権を残して死亡し、それを子のB、C、D(法定相続分は各3分の1)が遺産分割協議をして、Bがすべてを相続したとします。

この場合、Bは本来の法定相続分300万円を超える部分の請求を当然にXに主張、対抗できないのです。

したがって、Xは「300万円しか払わない」と言って900万円の請求を拒否できます。

3.債務者に対抗するには

債務者に対抗するためには共同相続人の全員から債務者であるXに、Bが単独で900万円を相続した旨の通知が必要です。

しかし、債権を取得していない相続人(この場合C、D)は通知する義務を負うものではありませんので、C、Dの通知が期待できない、協力してくれない場合もあります。

そこで、民法899条の2②は、相続人全員からの通知に代わり、法定相続分を超えて取得した相続人(この場合B)が遺言や遺産分割の内容を示して(そこには自分が法定相続分を超えて取得したことが書かれている)通知をしたときは相続人全員が通知したものとする、としています。

今回のケースでは

①B、C、Dの全員でXに対してBが債権全額の900万円を取得した旨を通知

または

②Bが債権全額の900万円を取得したとする内容の遺産分割協議書を示して通知

をしなければ自己の相続分300万円を超える600万円の部分についてXに対抗、主張することができません。

なお、Bが300万円を超える部分についても債権を取得したことを、債務者であるX自らが承諾した場合には通知がなくても対抗できます。

この場合、債務者自らが認めているのであれば、さらに通知まで必要とする理由に乏しいからです。

4.まとめ

所有権や権利を当事者以外の第三者に対抗するためには、いわゆる「対抗要件」を備えるべき場合があります。

債権(権利)であれば上述のとおりです。

また、不動産であれば「相続登記」になります(ただし、自分の法定相続分については登記なくして対効可)。

詳しくは<相続による自宅の名義変更は必要?しないとデメリットはある?>

 

相続したらそのままにするのではなく、先のことも考えて所定の手続きを行うことをオススメします。

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