1.現物分割とは
現物分割とは、相続人間で被相続人の遺産をそのままの形で分け合う遺産分割の方法の内の1つで、最もオーソドックスな方法と言えます。
たとえば、不動産は配偶者が相続、預貯金は子が相続、といった具合です。
以下の場合、現物分割が選択されることが多いです。
◆遺産が多い
遺産が多いということは相続人間で柔軟に分けることができるでの、現物分割に適します。
◆遺産の大部分が現金、預貯金など分けやすいもの
遺産が不動産しかない場合と異なり現金、預貯金の割合が大きい場合、相続人間で容易に分けることができます。
◆現物分割で納得している
それぞれの実情に合った遺産を取得することに、相続人間が納得し、合意していれば現物分割は余計な手続きや手間がかからないため有効な方法です。
2.現物分割のメリット
(1)手続きが簡単
この現物分割、手続きが比較的簡単といえます。
現物分割は基本的に遺産をそのままの状態で相続します。
換価分割と異なり、不動産などの財産の売却も不要なため、費用がかかりません。
代償分割のような複雑な代償金の計算や相続人の間での精算なども不要です。
したがって、長期化やトラブルになる可能性が低いです。
長期化しにくいので、相続税の申告期限(10か月)を気にすることも通常はありません。
(2)取得方法がわかりやすい
換価分割などと異なり、事細かな条件などを決める必要がないので、権利関係が明確になります。
迅速に対応できるため、基本的に相続財産をすぐに相続できます。
3.現物分割のデメリット
(1)相続人間の相続分を一致させることが難しい
遺産は全てが同じ価値、評価というわけではありません。それぞれ価値が異なることが通常です。
しかし、現物のままでの相続なので、不動産を取得する者と現金で取得する者の実際の相続分、価値を平等に一致させることは難しいです。
したがって、相続人間で取得金額、価値にバラツキが出る可能性が高いです。
その点、換価分割は、最終的に売却した財産(不動産など)の売却金を合意した割合にしがって分配するため、相続分の公平性という点ではバランスを取りやすいといえます。
(2)遺産の価値が下がる可能性がある
現物分割に伴い、土地を分筆する必要がある場合は、分筆によって利用制限などがかかり、土地の価値が下がる可能性もあります。
4.遺産分割協議書の書き方
相続人間で合意できれば、遺産分割協議書を作成します。
以下は、遺産分割協議書の記載例です。だれがどの遺産を取得するかを記載していきます。
<現物分割による遺産分割協議書の記載例>
不動産の表示は、登記簿謄本の記載どおり正確に記載します。
市町村の合併や換地処分などで所在名が変わっている場合もあります。また地積や床面積が変わっている場合もよくありますので、最新の登記簿をもとにすることです。
預貯金については金融機関名、支店名、預金種別(普通・当座など)、口座番号を記載しますが、残高までの記載は不要です。
最後に日付の記入、相続人全員が署名し、実印で押印します。左の〇枠に念のため捨て印を押印しても良いでしょう。
相続財産の記載は特に重要なので、書き間違えのないように複数人で二重チェックしましょう。
5.まとめ
現物分割は、余計な費用や手間もかからず、早期に合意できる可能性もあるため、相続人間で納得できるのであれば最善の分割方法といえます。
相続人の事情を把握し、だれが何を取得した方が自然かなどを見極めながら協議を進めていけばスムーズに合意できることでしょう。