相続人全員で遺産分割協議を行ったことを書面として残すため、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名し、実印を押印します。
合意内容を証拠として書面に残すことにより、言った言わないを防ぐことができますし、実際の相続手続きの際に必要になってくるので、法律上は遺産分割協議成立の要件ではないですが、必ず作成しておきます。
1.遺産分割協議書作成の際の注意点
遺産分割協議書を作ったはいいが、不備があり使えないといったケースもあります。最悪、また相続人全員から実印をもらい直すといったことも起こりえます。
そのようなことがないよう、遺産分割協議書を作成する際には最低限、以下の点に気を付けて作成することです。
◆署名は自書で
記名式(印字されているもの)でも問題はありませんが、将来のトラブル防止のために自書がベストです。
◆住所の記載は住民票や印鑑証明書どおりにする
1-2-3などではなく、できれば住民票や印鑑証明書の記載とまったく同じように1丁目2番3号と正確に記載しましょう(1-2-3と記載しても問題はありません)。
◆相続財産の記載は詳細に、間違いのないよう
相続財産の記載、たとえば、不動産であれば登記簿の記載どおりに書く、など正確な記載が求められます。
なかには所在だけ書かれて地番、家屋番号を省略している協議書を見かけることがありますので要注意です。
また、「自宅」や「●●市にある土地全部」など第三者が見てもまったく分からない記載、対象物を特定できていない表記は登記がとおらない可能性が高いので、必ず正確に記載することです。
◆だれが何を相続するか明確に書いておく
だれが何を相続するのかがあいまいな記載、不明確、不明瞭な記載は、相続手続きに支障をきたすので、必ず明確、明瞭に書いておくことです。
◆誤記や脱字がないようにダブルチェック
単純な誤記、脱字はダブルチェックで回避できます。
特に預金口座番号は間違えやすいので気を付けましょう。
◆換価分割や代償分割の際の記載は詳細に
贈与と認定されないような記載にすることです。
詳しくは<共有?単有?換価分割では相続登記の名義はだれにしておくべきか>
また、その他にも注意すべきポイントがあります。
詳しくは<換価分割の場合の遺産分割協議書の書き方で注意すべきポイント>
代償分割においても、贈与と認定されないような工夫をする必要があります。
詳しくは<代償分割のポイント>
◆ワープロ、パソコンで作成すべき
法律上は手書きでも問題はないですが、保管による経年劣化や偽造の可能性などを考えると、ワープロ、パソコンで作成することが望ましいです。
◆押印は実印で
法律上は実印である必要はありませんが、実際に法務局や銀行の手続きをする場合は、実印が押印されたものが必要になります。そのため、印鑑証明書もセットになるのです。
実印登録していない相続人は、まずは役所にて実印登録をすることです。
◆協議書が数ページにわたる場合は契印が必要
相続財産や相続人数が多い場合は、協議書が数ページにわたることもあります。その場合は忘れやすいところですが、各ページの継ぎ目に相続人全員で契印(実印で)をします。
これにより、各ページがつながっていることの証明になりますし、途中のページが抜かれたり、差し替えられることの防止にもなります。
◆捨て印は念のため押しておく
明らかな誤記や軽微な書き間違えなどがある場合、捨て印があると便利ですので、念のため押しておくことをオススメします。
ただし、捨て印を押すことに抵抗のある人もいますので、ケースバイケースで対応しましょう。
◆協議書に記載のない相続財産が新たに判明した場合の対処法やその帰属先について
協議書に記載されていない財産が後日、判明することはよくあります。
その際の取り扱いについても記載しておくことをオススメします。
「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、相続人間で再度協議し、分割する」
もしくは
「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、●●が相続する(もしくは●●が3分の1、■■が3分の2を相続する)」
などと書いておくことで再度の遺産分割を回避することができます(もっとも、遺産によっては再度話し合った方がよいケースもあります)
2.まとめ
以上のことを意識しないで遺産分割協議書を作成した結果、相続手続きができない、場合によってはトラブルに発展する可能性もあります。
協議のやり直しとなると、大変な労力を使います。
また、改めて相続人が協力してくれる保証はまったくありません。
中には一度協力してくれたのに、2度目の協議は一切協力してくれないといったケースもあります。
そのため、将来モメないために間違いのない正確な遺産分割協議書を作成することです。
書き方や記載が必要な事項などについて迷った際は専門家に相談することをオススメします。