相続した建物を勝手に解体しても大丈夫?

相談事例

2年前に母が死亡し、母名義の土地と建物があるのですが現在、空き家状態となっています。

相続人は遠方に居住していることもあり、たまに換気に行く程度で2年間ほぼ使用しておらず、そのため劣化が激しくあちこち傷んでいます。

庭の草木も荒れ放題で、一度刈ったのですがまたすぐに生えてきてしまい、それ以来、手つかずです。

空き家のまま放置しておくのも景観を損ないますし、火事、延焼も心配です。

このままでは色々と不都合がありそうなので、土地の固定資産税は上がるかもしれませんが解体しようと検討しております。

相続人は長女の私と二女の妹の2人ですが、私が取り壊しの段取りや手続きなどを勝手に進めても問題はないでしょうか。

1.まずは遺産分割

相続人は子の2人なので、法定相続分はそれぞれ2分の1になります。

つまり、いくら自宅が空き家により老朽化して、財産的価値を失っているとはいっても、一方も権利を持っている以上、勝手に自宅を解体してしまうと、のちのちトラブルのもとになるのでやめておくべきです。

遺産は相続人の共有状態なので、まずは相続人の間で遺産分割協議を行い、自宅建物の取得者を確定させることが先決です。

2.遺産分割が成立したら

遺産分割協議を経ていれば取得者の意思で自由に解体し、滅失登記をすることが可能となります。

滅失登記とは、その建物が解体や焼失などで物理的になくなった場合に、その建物の登記簿を閉鎖する手続きのことです。

この世にないものを登記上公示しておく理由も必要性もありませんので、登記簿を閉鎖するため登記です。

3.滅失登記は必要?

解体したのでもうそれでよいではないか、との声が聞こえてきそうですが滅失登記は法律上、義務付けられています(解体してから1か月内)。

滅失登記をしていなければ不利益を受けるケースもあります。

たとえば、相続した土地を担保にして銀行から融資を受けるといった場合、その上に建っていた建物を解体したとします。

この場合、建物の滅失登記がされていない状態では融資の支障となるのが一般的です(通常、滅失登記をしていることが融資条件)。

建物が存在しないのに滅失登記をせず、登記簿をそのままにしておくと、

 

「借りたい時期に借りれない可能性」

「時期を逃して思わぬ損害が出た」

 

このような事態に陥るかもしれません。

したがって、建物を解体した場合は、速やかに滅失登記も行うことをオススメします。

なお、滅失登記は司法書士の仕事ではなく、土地家屋調査士の仕事になります。

4.滅失登記の前に相続登記は済ませておくべき?

遺産分割協議により取得者が確定しますが、わざわざ建物名義を被相続人から相続人に変更する必要はありません。

被相続人名義のまま、滅失登記が可能です。

この世にすでにその建物がない以上、相続登記をする実益もなく、むしろ手間や登録免許税のことなどを考えると負担でしかありません。

したがって、相続登記は省略可能です。

また、滅失登記については、相続人が複数いてもその内の1人からの申請が認められています。

実際に解体等して建物が存在していない以上、取得した相続人全員の関与まで要求する必要はないですし、単独申請を認めてもだれも不利益を受けないからです。

1人の関与で充分、ということです。

5.まとめ

被相続人の建物を解体した場合のご質問を受けることがありますが、解体により滅失登記をすることになります。

滅失登記は相続人の1人からでも申請可能なので、負担は軽減されています。

もっとも、それは遺産分割協議を経て取得者が確定し、建物解体のうえ滅失登記をする際の話です。

話し合いもしていないのに勝手に建物を取り壊してしまうと、他の相続人から損害賠償請求を受ける、といったことにもなりかねないので要注意です。

相続人が他にもいるのであれば、建物解体の判断そのものは他の相続人を無視して独断ではできないということです。

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