相談事例
祖父A名義の土地があるのですが、その名義を変更する前に父Eが死亡しました。
先日、祖父と父の相続人全員が集まり、遺産分割協議を行いました。
その土地はずっと私の父が使用していて、父亡き後、今後は私Gがそのまま使っていく予定ですので、土地を私名義にする内容で合意に至りました。
そこで、土地の名義を祖父から私に直接移したいのですが、そのようなことは可能でしょうか。
それとも、まずはいったん祖父から父名義に移す必要があるのでしょうか。
可能とした場合、名義を変更するための登記手続きはどのようにすればよいでしょうか。
1.数次相続
一般的に数次相続とは、被相続人が死亡した後、遺産分割を終える前に相続人の一人が死亡し、さらに第2、第3と相続が開始すること、をいいます。
以下は、本事例の相続関係です。
<事例の相続関係説明図(数次相続)>
Aの相続人はB、C、D、Eですが、遺産分割を終える前にEが死亡しました。
Eの相続人はFとG(相談者)です。
この場合、Aの遺産分割に参加する必要がある者は、B、C、Dと、Eの相続権を承継したF、Gになります。
その法定相続分は以下のとおりです。
第1次相続(Aの相続人)
B・・・2分の1
C・・・6分の1
D・・・6分の1
亡E・・・6分の1
第2次相続(Eの相続人)
F・・・12分の1
G・・・12分の1
F、GはAの相続人ではないですが、Aを相続したEの相続人であるため、EがAから相続した持分6分の1を分け合います。
そのため、Aの相続人とともに遺産分割協議をする必要があるのです。
「相続を放っておくと大変なことになる」とはこのように次々に相続が発生して相続人が拡大していくことをいいます。
2.数次相続登記
事例のケースでは、被相続人である祖父Aから孫Gに直接、土地の名義を移転したい、という相談です。
不動産の名義を変更する場合、原則は所有権移転の流れを時系列どおりに登記する必要があります。
つまり、祖父A名義からまず父E名義(死亡していますが、登記名義人となることはできます)、そして相談者である孫G名義に移します。
これだと、登記申請が2件となってしまいますが、一気に祖父名義からG名義を変えることができれば、登記費用の節約にもつながりますし、申請人の負担軽減にもなります。
そこで、登記実務上、中間の相続が共同相続ではなく単独相続であれば、直接、祖父から孫名義に相続登記をすることが可能です。
単独相続の原因は問わないため、もともとAの相続人がEのみであっただけに限らず、E以外の相続人(C、D)が相続放棄した場合や、事例のように遺産分割によって第1次相続の相続人がEのみの単独相続になった場合であれば、G名義に直接移転登記できます。
その場合の登記申請書の原因の記載は以下のようになります。
平成28年〇月〇日E相続(この日付はAの死亡日を記載)
平成30年〇月〇日相続(この日付はEの死亡日を記載)
それぞれの相続の発生日付を記載する必要があるため、このように併記します
なお、通常の相続登記の原因は「年月日相続」です。
詳しくは<自分でできる!相続登記の申請方法や申請書の書き方>
3.最終の相続は共同相続でもよい
数次相続による相続登記をするには、中間の相続が単独であればよいため、最終の相続(第2次相続)が単独相続である必要はありません。
共同相続であっても直接、移転登記が可能です。
たとえば、事例でいえばFとGの共同名義にすることもできます。
4.代襲相続との違い
数次相続と混同しやすいものとして代襲相続があります。
代襲相続とは、被相続人が死亡するより「前」に相続人が死亡した場合に、その死亡した相続人の子が代わりに相続することです。
上の相続関係説明図でみれば、EがAより前に死亡し、その後にAが死亡することです。
代襲相続の場合、数次相続と違い、Aの相続人はB、C、Dと、Eを代襲相続するGです。
Eの妻Fは相続人とはなりません。
ここが、数次相続と代襲相続の一番の違いです。
ここで勘違いをしてしまうと、相続人が変わってきますので要注意です。
5.まとめ
相続開始後、遺産分割が終わる前にその相続人が死亡してしまうことがあります。
登記上は、数次相続登記が認められており、申請人の負担軽減となっています。
ただ、相続人がだれになるのか、遺産分割協議にはだれが参加しなければならないのか、分かりにくいところがあります。
協議に参加すべき者が参加していないことによって、遺産分割協議が不成立となってしまうこともあります。
逆に、協議に参加する必要のない者が参加して協議が無効となる場合もあります。
そのため、数次相続の場合はより慎重な検討が必要になってきます。
数次相続は複雑なケースもあるため、専門家に相談することをオススメします。