配偶者居住権が適用される時期は?遺言書の書きかえも視野に

相続法が改正され、2020年4月1日から配偶者居住権の制度が施行され、同日よりスタートしました。

この配偶者居住権は、遺言書(自筆証書遺言、公正証書遺言どちらでも)で、配偶者に遺贈することにより取得することができます。

しかし、その遺言書を書いた日によっては配偶者居住権を取得できない場合もあります。

それは、配偶者居住権の施行日である2020年4月1日に関係します。

1.遺言書が作成された日付が重要

配偶者が配偶者居住権の適用を受けることができるかどうかは、遺言書が作成された日付によって異なってきます。

2020年4月1日より「後」に書かれた遺言

施行日以降に書かれた遺言に、配偶者居住権を遺贈する旨が記載されていれば、問題なくこの制度が適用され、配偶者は、遺言者の死亡により配偶者居住権を取得できます。

2020年4月1日より「前」に書かれた遺言

たとえば、配偶者居住権という制度が始まる、ということを夫がテレビ、新聞などで施行前に知ったとします。

この制度を使えば妻が預貯金などの資産をある程度の額を相続でき、かつ、自宅に住み続けることができるということです。

その人は、人間いつ亡くなるか分からないと考え、4月1日の施行日前の2月に、妻のために自筆証書遺言を書き、そこに妻に配偶者居住権を遺贈することを記載しました。

これで一安心した遺言者は、4月1日の施行日後の5月に亡くなりました。

この遺言書で妻は配偶者居住権の適用を受けることができるか。

この場合、遺言書の配偶者居住権の部分は無効になってしまいます。

遺言書を書いた夫が施行日後に死亡していますが、配偶者居住権について書かれた遺言書が施行日前のものです。

この時はまだ配偶者居住権の制度、規定はなく、また、「施行日前に書かれた遺言でも配偶者居住権の適用を受けることができる」といった規定もありません。

したがって、残念ながら、妻は遺贈によっては配偶者居住権を取得することができません。

配偶者居住権を取得したければ、相続人間での遺産分割で取得することになります。

なお、配偶者居住権の記載部分は無効だとしても、ほかの部分(たとえば、不動産を遺贈するなど)まで無効となるものではありません。

2.遺産分割の場合は?

配偶者居住権は遺産分割でも取得できますが、遺産分割で配偶者居住権を取得する場合も注意点があります。

2020年4月1日より「後」に相続が開始し、遺産分割が成立した

施行日後に相続が開始し、その後に配偶者居住権を取得する内容の遺産分割が成立した場合は、こちらも問題なく配偶者居住権を設定できます。

2020年4月1日より「前」に相続が開始し、4月1日以降に遺産分割が成立した

施行日前に相続が開始し、施行日後に配偶者居住権を取得する内容の遺産分割が成立しても、配偶者居住権を取得することはできません。

相続が開始した日が施行日前なので、その被相続人の相続については改正民法は適用されず、よって配偶者居住権の適用を受けることもできません。

3.まとめ

亡くなったのが配偶者居住権施行日の2020年4月1日以降であっても、それ以前の日に書かれた遺言だと配偶者居住権の適用を受けることはできません。

遺言者の死後、遺言者の思い違いにより、配偶者が不利益を受けてしまうおそれがあります。

配偶者に、配偶者居住権を取得して欲しいと考えているのであれば、2020年4月1日以前に配偶者居住権に関する遺言を書いた方は、元気なうちにあらためて遺言書を作成し、そこに配偶者居住権を遺贈する旨を書き込むことをオススメします。

 

なお、遺言書の書き方として詳しくは<遺言書にはなんて書く?配偶者居住権を遺贈する場合の遺言書の記載例>

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