相続放棄者に対して遺留分侵害額請求ができるか?

遺留分を侵害された相続人は、遺贈や贈与を受けた相手方に遺留分侵害額請求ができます。

その前提として、遺留分侵害額を計算する必要があり、この場合「遺留分算定のための基礎財産」を計算する必要があります。

 

詳しくは<いくら請求できる?遺留分侵害額の計算方法>

 

1.相続人であった者への遺留分侵害額請求

では、贈与の相手方が相続放棄をしたら。

相続放棄により、相続人の地位は失いますが、生前、被相続人から相続放棄をした者に対してされた贈与を遺留分侵害額請求の対象とすることができるか。

この場合、その相続放棄者に対してされた贈与が以下のどちらかにあてはまれば遺留分算定のための基礎財産にその贈与を含めることができます(つまり、遺留分侵害額を多くできる)。

①相続開始前の1年以内にされた贈与に対して

被相続人の死亡する1年内にされた贈与であれば、相手方が相続放棄者であっても、その贈与も遺留分算定のための基礎財産に含むことができ、侵害額を多くすることが可能です。

②当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与に対して

この場合は、いつ行われた贈与であっても(何年前のものでも遺留分算定のための基礎財産に含まれるため、遺留分侵害額請求が可能です。

もっとも、遺留分を主張する者の方で「当事者が遺留分権利者(自分)に損害を与えることを知ってした贈与」であることを立証しなければなりません。

2.時効に注意

遺留分侵害額請求には時効があります。

具体的には以下のいずれかの期間の経過により、時効により権利が消滅し、行使することができなくなりますので注意しましょう。

◆遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年

または

◆相続開始から10年

3.まとめ

相続放棄をしている者に対しても、その者に対してされた贈与を含めて、遺留分侵害額を計算して請求することは可能です。

ただし、相続開始の1年以上前の贈与に対しては、損害を与えることを知ったなどの立証が必要になりますが、そのハードルは正直高いため、認められることは簡単ではないでしょう。

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