相続放棄をしても遺留分侵害額請求はできる?

相談事例

しばらく会っていない父親が亡くなり、長女である私が相続しました。

子は私だけで、母はすでに亡くなっています。

父とは長い間会っていなかったため、どれくらいの財産を有しているのか分かりませんが、自宅不動産は父名義です。

そのようななかで、父親に借金があるということを聞きましたが実際のところは不明です。

いつ、債権者から請求されるか分からない状況で生活をしていくのは非常にストレスのかかることなので、相続放棄を検討しています。

一方で、借金がない場合のことも考えると相続放棄しない方がよいのかとも思い、決断できていません。

迷っている間、自分で色々調べたところ、相続人である子には最低限の取り分である遺留分というものがあることを知りました。

相続放棄をしたら取り分がゼロになりますが、仮に私が父親の相続について相続放棄をしたとしても、次の相続人となる父のきょうだいに対して遺留分の請求はできますか。

相続放棄をしても遺留分請求ができるのであれば、最低限の取り分は確保できるうえに、あるかも知れない借金を放棄できるため相続放棄をしたいと考えています。

1.相続放棄により相続人としての権利を失う

相続放棄により、被相続人の有していたプラスの財産、マイナスの財産の一切を相続することはありません。

はじめから相続人ではなくなるからです。

相続人ではなくなるということは、相続人が有していた権利も失うことを意味します。

その権利の中には当然、遺留分(侵害額請求権)も含まれます。

相続放棄をして相続債務を免れておきながら、かたや遺留分侵害額請求ができるほど都合のいい制度はありません。

相談事例では、相続放棄(もしくは限定承認)をするか、潔く相続するか、ということになります。

2.まずは債務の調査をする

借金があるかどうか不明であるならば、まずは相続人の方でできる限りの調査をすることです。

被相続人のすべての債務が把握できるわけではありませんが、関係機関に対して照会をかけて債務の存在が判明することがあります。詳しくは<被相続人の借金を調べる方法は?>

ただ、調査には時間を要することが普通なので、相続放棄の申述期間に注意する必要があります。

「借金の調査をしていたら期間が過ぎてしまった・・・」

は通用しませんので、そのような事態にならないよう、場合によっては熟慮期間の伸長申立ても視野に入れておくべきでしょう。詳しくは<相続放棄の熟慮期間を3か月以上に延長する方法>

3.まとめ

相続放棄により、はじめから相続人ではなくなります。

相続人としての権利である遺留分も主張できなくなります。

したがって、遺留分を有していることを前提とする遺留分侵害額請求はできません。

相談事例のように被相続人に借金があるかどうか分からないのであれば、まずは相続人の方で、できる限りの調査をしてから判断することです。

一度した相続放棄を撤回することは困難です。詳しくは<やっぱりやめたい!相続放棄の撤回、取消しはできる?>

あとで借金を上回る多額の預貯金などが見つかったとしてもやり直しはできませんので、借金だけでなく、プラスの財産の調査も並行して行うことをオススメします。

財産の調査方法について詳しくは<自分でも簡単にできる!相続財産の調査方法>

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