相続放棄によって住宅ローンが組めなくなる?相続放棄の誤解

1.相続放棄の誤解

相続放棄は、はじめから相続人ではなかったとみなす制度です。相続財産のうち、借金などのマイナスの財産の方が多ければ選択肢に入ります。

ただ、この相続放棄について誤解をしているため、利用をためらっている方がいらっしゃいます。

そこで、以下ではよくご質問を受ける誤解と実際のところは、を解説します。

誤解①血族関係まで放棄したことになる?

はじめから相続人ではなかったとみなされるといっても、それは相続法の中での話です。

もともとの血族関係、肉親関係が失われるわけではありません。

誤解②職業が制限される?

相続放棄よって、何か職業が制限されたり、国家資格をはじめとした各種資格を取得できなくなったり、といったことはありません。

誤解③ブラックリストに載る?

相続放棄をすることによって、住宅ローンが組めなくなるのではないかといったご質問を比較的よく受けます。

相続放棄の事実が信用情報に事故情報として記載(いわゆるブラックリスト)され、各種ローンが組めなくなるといったことは一切ありません。

相続放棄の事実が与信審査に影響することはないです。

誤解④戸籍に載る?

相続放棄の事実は戸籍に記載されません。家庭裁判所から役所に通知がいくものでもありません。

なお、相続放棄をしたかどうかは「相続放棄申述受理通知書(証明書)」で確認できます。

誤解⑤放棄するには明確な理由が必要?

放棄するための明確な理由がなくても相続放棄は可能です。

たとえば「遺産相続にかかわりたくない」や「生活に困っていないため、相続する必要がない」などを理由として放棄することもできます。

あくまで「相続放棄をする意思」が明確に、ちゃんとあれば放棄する理由までは特に細かく問われません。

誤解⑥生命保険金は受け取れない?

放棄により生命保険金を受け取れなくなるのではないかといったことをよく聞かれますが、相続放棄した者が、保険金の受取人として指定されていれば受け取ることができます。

 

詳しくは<相続放棄すると生命保険金はもらえない?死亡退職金は?>

誤解⑦遺産放棄は相続放棄したことになる?

最も誤解されている部分ではないでしょうか。

相続放棄は家庭裁判所への申立てが必要です。

一方、遺産分割協議で遺産を相続しないこと、自分の取り分をゼロにするいわゆる「遺産放棄」では、相続放棄したことになりません。

 

詳しくは<相続放棄と遺産放棄の違い>

誤解⑧相続放棄すれば、相続人の数が減る?

相続放棄により、相続人の数は減ることは確かですが、場合によっては増えることもあります。

たとえば、妻に全財産を相続させようと考え、子の全員が相続放棄したとします。

この場合、相続権が第2順位(第3順位)に移ってしまうことになるため、結果的に相続人が増え、むしろ相続手続きが複雑化し、遺産分割協議が難航する可能性も出てきます。

子が相続放棄をするのではなく、妻と子で、妻に全財産を相続させる内容の遺産分割協議をしておけばよかったのです。

 

詳しくは<子がいないと配偶者が全部相続する?相続人の勘違い>

2.まとめ

司法統計によると相続放棄の申立ては毎年、20万件以上されています。

この相続放棄、誤って理解されている部分もあります。

当然ながら、被相続人の権利、義務すべてを放棄してしまうため利用の判断は慎重にする必要がありますが、小さな誤解により利用をためらっているケースもありますので誤解を解いたうえで、するかどうか、判断に迷った際は専門家に相談することをオススメします。

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