1.配偶者居住権、放棄で贈与税?
配偶者居住権の消滅原因はいくつかありますが、消滅にあたって税務上、注意すべき点があり、それは消滅によって贈与税が課税させる場合があるということです。
配偶者居住権が消滅することによって、建物所有権は、配偶者居住権という負担から解放されることになります。
完全な所有権となる。
この場合、配偶者居住権の放棄に対して建物所有権者が対価を支払わずにもしくは支払ったとしても著しく低い価額で経済的利益(=配偶者居住権の負担ない、使用収益できる権利)を受けた場合には、贈与と認定され、贈与税がかかる可能性があります。
なお、建物自体はボロ家でまったく価値がなく、放棄しても贈与税の問題はないだろうと考えても、敷地利用権が高額になって贈与税がかかるケースもあるので要注意です。
2.配偶者居住権が消滅するケース
以下、配偶者居住権が消滅する6つのケースです。
①配偶者居住権者の意思表示による放棄
②建物所有者との合意で解除
③善管注意義務、用法遵守義務などの義務違反を原因とする消滅請求
④配偶者居住権の存続期間満了
⑤存続期間中に配偶者が死亡
⑥建物の全部が滅失その他の理由により使用・収益できなくなった
3.贈与税が課税される場合は?
配偶者居住権の消滅により贈与税が課税されるケースとして以下の3つがあります。
・配偶者居住権者の意思表示により放棄した場合
・建物所有者との合意で解除した場合
・善管注意義務、用法遵守義務などの義務違反によって消滅した場合
これらの場合は、配偶者居住権の消滅に対して対価の支払いがない(もしくはあっても著しく低い金額)場合は配偶者居住権者から建物所有者に対して贈与があったものとして課税されます。
4.贈与税が課税されない場合は?
一方で、贈与税が課税されないケースは、
・存続期間が満了した場合
・存続期間中に配偶者が死亡した場合
・建物の全部が滅失その他の理由により使用・収益できなくなった場合
贈与税がかからない理由として、上述のものとは異なり、配偶者居住権の消滅理由がいずれもやむを得ず、当事者の意思に基づくものではない、といえます。
これらの理由で消滅したのであれば、たとえ、配偶者居住権の消滅により実質的には経済的利益を受けるとしても、贈与税は課税されません。
5.配偶者が対価を受け取った場合は
配偶者が配偶者居住権を放棄し、それに対して適正な対価を受け取った場合は、贈与にはあたりませんが、配偶者が受取った金額が譲渡所得の収入として課税対象になるため要注意です。
6.まとめ
一度設定した配偶者居住権を消滅させる場合は、贈与税(所得税)の問題も意識しておくことです。
安易に放棄した結果、贈与もしくは譲渡収入と認定されてしまい、思わぬ税負担を課せられるおそれがあるので、放棄を考えているのであれば、まずは専門家に相談することをオススメします。