贈与契約書には何を書く?その書き方、作り方

贈与は、あるモノをあげる人と、そのモノをもらう人との意思の合致によって成立する契約です。ただ、いざ贈与を思い立ったとしても、実際、何をどのようにすればよいか迷われるのではないでしょうか。

1.贈与する際の検討事項

贈与にあたり、まずは「贈与した結果」を考えることが重要です。ただ単に「あげたいから」「いらないから」といった感覚で贈与することはオススメしません。

贈与では検討すべき点がいくつかありますが、まずは以下の点が思い浮かぶと思います。

◆贈与税の問題

贈与税に限らず、将来的な相続税を検討する必要性もでてくるでしょう。

◆贈与すると税務署への申告が必要かどうか

実際に贈与したとして、申告がいるのかどうか、税法上の特例などを使う場合も申告がいるのかなどです。

◆実際に贈与するとなった場合の手続き

名義変更をはじめとした、その後の具体的な手続きです。不動産であれば贈与登記です。

2.贈与契約書を作成する目的、メリット

以上の点を検討した結果、「贈与しても問題ない」「いざ贈与しよう」となった場合に、まずは「贈与契約書」を作成しておくことです。

贈与契約書を作成する目的、メリットは次のとおりです。

トラブル防止のため

贈与は口頭でも成立しますが、契約書を作っておけば、あとで言った言わないのトラブル防止になります。

また、将来の争続対策にもなります。

契約書がなければ遺産分割の際に、他の相続人が贈与を否定してくるかもしれません。

したがって、たとえ、あげる相手が家族、親族だとしても契約書は作成しておくことです。

税務上の対策のため

契約書があると贈与の事実を客観的に第三者に証明することができます。

たとえば、契約書がないと税務署から贈与が否認される可能性もあります。

否認された結果、せっかく生前対策として贈与を行っていても、贈与がなかったものとされ、長年の節税対策がムダになる可能性もあります。

したがって、たとえ贈与税の基礎控除内(110万円)の贈与で、申告の必要がなくても贈与の度に、贈与契約書を作成しておくことをオススメします。

また、契約書がないと、場合によっては名義預金とみなされる可能性があります。

契約書を作成しておくことは名義預金とみなされないための1つの対策としては重要になります。詳しくは<贈与がなかったことに?相続税が増える?名義預金の解説>

裁判に発展した場合のため

贈与契約書は強力な証拠力を備えています。

贈与を巡って訴訟になった場合に、贈与契約書を証拠として提出すれば裁判官において贈与があったと認定される可能性が高くなります。

一方的に取消されることを防止するため

書面によらない贈与、つまり契約書を作成していない口頭による贈与については、贈与する前であれば、いつでも各当事者が撤回、取消すことができます。

贈与は無償、タダでモノをあげる行為なので、契約の拘束力が売買などに比べ弱いです。

そのため、贈与が口頭にすぎなければ、一方的に「やめた」といって贈与をなかったことにできるのです。

したがって、もらう人にとっては特に重要となりますが、一方的に取消しされないために契約書を作っておくことを強くオススメします。

3.何を書く?

では、いざ贈与契約書を作成するとなった場合に何を書けばよいのかというところですが、遺言書と異なり贈与契約書の内容に法律上決まった方式はありません。

最低限、以下の内容が書かれていれば問題ありません。

◆だれが、だれに贈与するか

あげる人を贈与者、もらう人を受贈者といいます。

◆何を贈与するか

贈与する対象物の詳細を記載します。

不動産であれば、所在や地番などを、登記簿謄本の記載どおりに書きます。

◆契約の成立の旨

あげる(申込)、もらう(承諾)の意思の合致によって、契約は成立します。

◆いつ贈与するか

贈与契約日です。一般的には署名欄の上に記載します。

◆いつまでに贈与するか

期限を設けているのであれば、その期限を記載します。

◆当事者の署名押印

氏名は、記名(印字されたもの)ではなく、署名(自書)しておくことです。印鑑は認印でもよいですが、証拠力の面を考えると、やはり実印で押すことをオススメします。


<贈与契約書の記載例>


以上は土地を贈与する場合のひな型です。念のため、所有権移転登記に関する条項も入れておいた方がよいでしょう。

4.収入印紙は貼る必要はある?

契約書を作成するため、そこに貼る収入印紙の問題が出てきます。

贈与する物が不動産であれば、不動産の評価額にかかわらず、一律200円です。一般的に契約書の左上部に印紙を貼り、当事者が割印します。

不動産は高額なので、その分、印紙も高額になると思いがちですが、贈与は売買と違って無償で財産をあげる行為です。

贈与契約書には売買契約書の売買代金のように金額の記載がされませんので、一律200円でよいのです。

一方、贈与する物が金銭や動産など、不動産以外の物であれば印紙は不要になるので、貼る必要はありません。

収入印紙は郵便局やコンビニで購入できます(なお、通常、コンビニは額面200円までの印紙しか販売していません)。

貼る印紙は200円で済むため、コンビニで購入するとよいでしょう。

なお、印紙が貼っていない、貼り忘れている場合であっても、契約の効力には影響ありません。貼っていなくても贈与は有効です。

5.贈与登記に使える

法務局に贈与登記を申請するときに、作成した贈与契約書を提出すれば、登記原因証明情報という書類の作成が不要になります。

なお、契約書のコピーをつければ原本は登記完了後に返却してくれます。

6.まとめ

様々な理由から、もしもの時のために贈与契約書を作成しておくことです。

贈与契約書の作成自体は難しいものではありません。

しかし、その前提の贈与税や相続税の基本的な理解、契約書の具体的な記載内容、名義変更手続きなどで分からない部分も出てくると思いますので、まずは専門家に相談することをオススメします。

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