遺産分割で相続した不動産を売却・換価して売却代金を分ける「換価分割」。
この換価分割によって不動産を売却した場合、社会保険料が上がるケースがあります。
以下の4つの社会保険種別のうち、保険料が上がるケースと上がらないケースがありますので、以下で解説いたします(なお、税法上の各種特例の適用はないものとします)。
なお、換価分割について詳しくは<換価分割のポイント>をご覧ください。
1.パターン①健康保険料
会社員などが加入する健康保険ですが、不動産の売却収入によっては、健康保険料は上がりません。
なぜなら、健康保険料額は給与額に基づいて計算されているからです。
よって、会社員などが相続した不動産を換価分割によって売却しても(譲渡所得が発生しても)保険料が上がることはありません。
2.パターン②共済組合保険料
公務員が加入する共済組合保険ですが、健康保険と同様、不動産の売却収入によっては、保険料は上がりません。
3.パターン③国民健康保険料
通常、自営業者の方は国民健康保険に加入しています。
そして、換価分割により、不動産を売却した場合、譲渡所得によっては(所得が増えた結果)自営業者の方は翌年の国民健康保険料が上がる場合があります。
会社員の健康保険料とは異なり自営業者の方が加入する国民健康保険料は、その人の所得に基づいて計算されるためです。
よって、所得が増えれば、その分が保険料にも影響し、結果的に保険料が上がることになります。
なお、いくら譲渡所得があったとしても国民健康保険料は年間の上限額は決まっているため(※)、保険料が上がることはあっても、(今のところは)100万円以上になることはないです。
(※80万円ほどですが、年々、数万円単位で保険料上限額は上がっています)
4.パターン④後期高齢者医療保険料
75歳以上の方が加入する後期高齢者医療保険ですが、国民健康保険料と同様に、後期高齢者医療保険料も所得に基づいて計算されるため、所得が増えれば保険料が影響を受けます。
したがって、譲渡所得が発生していれば翌年の保険料が上がることになります。
なお、年金額には影響ありませんので、翌年の年金支給額が少なくなるといったことはありません。
5.いつまで上がるか
前述のとおり、保険料が上がるケースであっても、上がるのは翌年だけです。
以降、毎年その金額となるわけではありませんので、翌年分の保険料が上がっても、翌々年からは売却前の保険料額に戻ります。
6.特別控除を受けた場合
特別控除の適用を受けれるかどうかで、保険料にも影響します。
譲渡所得は、税法上の特例が適用された結果の所得が基準となります。
たとえば、居住用不動産の3000万円特別控除(いわゆるマイホーム控除)の適用を受けた結果、譲渡所得がゼロになれば、総所得額にも影響ないため、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料が上がることはありません。
7.まとめ
自営業者や後期高齢者の方は、換価分割によって不動産を売却した結果、譲渡所得が発生していれば、翌年の社会保険料が上がってしまうことがあります。
税金だけのことを意識していたため、保険料のことまで考えが及んでいなければ、想定外の保険料が翌年かかってきて驚くこともあるのではないでしょうか。
所得が出た場合は、保険料も意識して、十分備えておくことが大切です。