相続関係説明図とは?その作成方法、書式

1.相続関係説明図とは

相続人の範囲を表す家系図として、「相続関係説明図」があります。

もっとも、家系図とはいっても先祖までさかのぼるようなものではありません。

たとえば、父親が死亡し、母親と長男、次男、三男の相続関係であれば、その範囲までを図にします。

相続人がだれかを図で示すのです。

戸籍の束をただ眺めるよりは、図にした方が分かりやすくなり、相続関係を読み取ることが簡単になるため、全体像を把握しやすいです。

そのため、相続手続きにおいては相続関係説明図が必要となるケースや、必要ではなくとも提出先が分かりやすいように参考として添付する場合もよくあります。

相続手続きを行う際は、戸籍謄本と一緒に提出することをオススメします。

 

相続手続きについてはこちらでもご説明しています。よろしければご覧ください。

2.相続登記の際には

相続登記の際には添付書面として戸籍謄本一式を提出しますが、あわせてコピーを提出すれば、手続き完了時に原本を返却してくれます。

ただ、戸籍を取ってみると分かると思いますが、場合によっては相当な分厚さになるくらいの量です。

そのすべての戸籍一式をコピーをするとなると大変な手間と時間がかかります。

そこで、相続関係説明図を作成、提出すれば、コピーまで提出していなくても、原本を返却してくれるので、申請人の大幅な負担軽減となります。

以下は、法務局に提出する際の相続関係説明図の例です(法務局以外に提出する場合でも、利用できる内容です)。

遺産分割の結果、配偶者が単独で相続する内容の記載例となっています。

末尾に「戸籍謄抄本及び除籍謄本は還付した」と書いておけば戸籍のコピーをつけることなく、原本を返却してくれます。

 


<相続関係説明図の例(法務局に提出する場合)>


 

3.相続関係説明図の作成方法に決まりはない

相続関係説明図の要式は特に決まりはないので、書き方などは基本的に自由です。

基本的には以下の情報を書いておきます。

 

◆被相続人の最後の本籍、最後の住所、氏名、生年月日、死亡年月日

◆相続人(代襲相続人がいればその者も)の住所、氏名、生年月日

◆すでに死亡している相続人であった者は氏名、死亡年月日

 

縦書きでも横書きでも問題ありません。

エクセル、ワードの決まりもありません。

戸籍謄本に記載されているとおりの相続関係が、相続関係説明図に正確に記載されていればまったく問題ありません。

なお、実務上、婚姻関係は二重線で表しておきます。

4.法定相続情報一覧図との違い

記載事項やその方法が定められている法定相続情報一覧図と、相続関係説明図には記載内容で異なる点があります。

なぜなら、法定相続情報一覧図はあくまで戸籍謄本の記載、情報から作成されるものなので、戸籍に載らない(載っていない)情報は反映されないからです。

むしろ、戸籍に記載されている情報以外の情報を反映することはできません(相続放棄の事実など)。

一方、相続関係説明図は書式に決まりがありませんので作成する者によっては、その内容が変わってきます。

以下は、実務上一般的に作成されている相続関係説明図と、法定相続情報一覧図との違いです。

 

なお、法定相続情報一覧図について、詳しくは<法定相続情報証明制度のメリット、デメリット>

 

①法定相続情報一覧図にはすでに死亡している者は記載されないが相続関係説明図には記載できる

法的相続情報一覧図は現在の相続人を記載しますので、被相続人より以前に死亡している、相続人であった者は記載されません。

相続関係説明図は自由なので、当然記載しておいても問題ありません。

②法定相続情報一覧図には相続放棄の有無が記載されないが相続関係説明図には記載できる

法的相続情報一覧図には相続放棄により相続権を失っている者も記載されます。相続放棄の有無は戸籍では分からないためです。

一方、相続関係説明図では基本的に相続放棄の旨は記載します。

その際には相続人の氏名の前に「相続放棄 甲野一郎」などと記載して、相続放棄された者であることが分かるようにしておきます。

③法定相続情報一覧図には遺産分割の有無は記載されないが相続関係説明図には記載できる

相続人間で遺産分割協議がされていても、法的相続情報一覧図にはその旨を記載することはできません。遺産分割協議をしたかどうかは戸籍から分からないからです。

相続関係説明図には、上記の相続関係説明図の記載例のように、遺産分割で相続しないことになった相続人の箇所に「遺産分割」と記載しておきます。

④法定相続情報一覧図では数次相続の場合でも、第2相続の内容は記載できないが相続関係説明図には記載できる

法的相続情報一覧図では、数次相続(被相続人死亡後に、相続人が死亡している)の場合、被相続人ごとに一覧図を作成する必要があります。

相続関係説明図では、数次相続であっても、2次相続、3次相続をまとめて記載することができます。

もっとも、3次相続まで進んでいる相続までまとめて記載するとなると、詰め込み過ぎで見にくくなるため、あまりオススメはしません。

⑤法定相続情報一覧図は調査に2週間前後要するが相続関係説明図は調査など不要

法的相続情報一覧図は法務局にて戸籍謄本をチェックのうえ、問題がなければ証明書とされるので、そのための調査の日数がかかります。

相続関係説明図は自分で作成さえすればそこで完了です。

5.まとめ

相続関係説明図を必要とする、もしくはあった方がよい相続手続きは多くあります。

ご自分で作成することもできますが、当然ながら戸籍謄本の記載どおりに作成する必要がありますので、前提として相続法の知識が必要になりますし、難解な戸籍の読み込みは必須となります。

相続人が1人でも漏れていれば、相続手続きははじめからやり直しとなってしまいます。

「相続関係説明図を作ってはみたけど不安だ」といった方は専門家に確認してもらうなど、必ず間違いのないようにすることです。

戸籍謄本と戸籍抄本の違いについての説明はこちらをご覧ください。

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