贈与税が非課税になる?特定贈与信託の解説

相談事例

私の息子が障がいがあるので、私が息子の金銭の管理などを行っているのですが、自分自身、年齢的にいつ倒れるか分かりません。

元気なうちに息子の生活支援金として、まとまった金額を息子に贈与したいと考えています。

ただ、少ない額ではないので、適切にお金の管理をしてくれるか不安なところもあります。

また、贈与税の問題も気になります。

そのような場合、何かいい方法はありませんでしょうか?

1.適切に管理できない、贈与税もかかる、、、

相談事例のように、障がいのある子のために将来的に生活支援をしていきたいのでまとまった金額を贈与しておきたい、と考えている方がいらっしゃいます。

しかし、まとまった金額を贈与した場合、障がいのある方が適切に管理できるかが不安であったり、多額の贈与税が課せられることもあります。

そのような場合、何かいい方法がないか。

一つあげるとすると、特定贈与信託という制度があります。

2.特定贈与信託とは

特定贈与信託とはどのような制度かというと、障がいのある者(たとえば子)のために親族など(たとえば親)が信託銀行・信託会社を受託者とする信託契約を締結し、金銭を信託します。

信託銀行・信託会社は信託されたお金を運用・管理し、障がいのある子の生活費、医療費などのため定期的にお金を交付します。

信託銀行・信託会社がお金を運用・管理し、一定額を交付してくれるので、相談事例のように親が亡くなったとしても引き続き金銭的支援を行えることができます。

なお、受託者は信託銀行・信託会社に限られるのでそれら以外の個人などを受託者とすることはできません。

3.お金以外を信託できる?

特定贈与信託において信託銀行・信託会社は基本的にお金だけしか信託を受け付けていませんので、たとえば不動産を信託したいと考えても難しいのが現状です。

不動産を信託したい場合は、不動産にも対応している信託銀行・信託会社を探す必要があります。

4.贈与税はどうなる?

通常、110万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。

ただ、まとまった金額となると110万円を超えてくることになるでしょう。そうなると贈与税の問題が出てきます。

贈与税率は高いので、思わぬ課税となり、将来的な生活支援に支障を来たす可能性もあります。

 

贈与税率について詳しくは<贈与税早見表と贈与税の計算方法>をご覧ください。

 

そこで、この特定贈与信託を利用することにより、障がいの程度によりますが贈与額が110万円をはるかに超えたとしても以下の額までは贈与税がかかりません。

また、親が贈与した金額は相続税もかかりませんので、相続税対策にもなります(資産の移転により、相続税の課税対象額を減らせる)。

 

◆特別障がい者・・・6000万円まで

<特別障がい者とは>

・精神上の障がいにより事理弁識能力を欠く状況にある者または重度の知的障がい者

・精神障がい保健福祉手帳に障がい等級が1級である者として記載されている精神障がい者

・1級または2級の身体障がい者手帳所有者

・特別項症から第3項症までの戦傷病者手帳所有者

・原子爆弾被爆者として厚生労働大臣の認定を受けている者

・常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち重度の者

・精神または身体に障がいのある65歳以上の重度の障がい者

◆特別障がい者ではない特定障がい者・・・3000万円まで

<特別障がい者ではない特定障がい者とは>

・中軽度の知的障がい者

・精神障がい保健福祉手帳に障がい等級が2級または3級の精神障がい者保険福祉手帳保有者

・精神または身体に障がいのある65歳以上の障がい者

5.障がいのある方が亡くなったあとは

通常、特定障がいのある方が亡くなると信託契約は終了することになりますが、信託契約において残った信託金の取得者を指定しておくこともできます。

残余財産の取得者をその他の相続人にしておくことや、第三者を指定しておくことも可能です。

福祉施設や母校、特定の慈善団体とすることも可能です。

ただし、別途、遺留分の問題はあるのでその点、留意しておく必要があります。

6.まとめ

「障がいのある子に何かしてあげたい」

「親亡き後に金銭的に苦労をさせたくない」

「元気なうちに障がいのある子に贈与をしておきたいが贈与税をかけたくない」

特定贈与信託制度を利用することにより、これらの想いに応えることができます。

贈与税の非課税額も大きいので、いくつかある選択肢の一つとして検討してもよいのではないでしょうか。

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