信託口口座とは?受託者の分別管理義務

家族信託においては、何かしらの財産を受託者に託すことになりますが、その信託財産、受託者の財産とは分別して管理保管する必要があります。

これを受託者の「分別管理義務」といい、受託者の数ある義務のうちの1つです。

では、分別管理とはいっても、具体的にどう分別するかですが、財産によってその方法などが異なってきます。

1.不動産

不動産(自宅、収益物件問わず)を信託したのであれば、登記が必要になります。

委託者から受託者へ名義を移す「所有権移転登記」と、その財産が信託財産であることを示すための「信託登記」を行いますが、この2つの登記は同時にしなければなりません。

この信託登記により登記簿上、その不動産が信託されていることが公示され、受託者固有の財産とは区別されていることが分かるのです。

2.金銭

当然、金銭には名前を書くことはできず、また、登記・登録する制度もありませんが、分別管理義務の観点からも、不動産と同様に自己の財産とは別々にしておき、適切に管理保管する必要があります。

そして、その方法としては信託専用の口座を開設して、その口座で管理することです。

いわゆる、

・「信託口口座」(しんたくぐちこうざ)

・「信託専用口座」

といわれるものです。

信託口口座とは

金融機関ごとに取り扱いは異なりますが、金融機関にて信託に限定した口座を開設できます。

この口座は、完全に受託者個人の口座と切り離したものになるため、受託者の債権者が口座を差し押さえることはできませんし、受託者が死亡した場合に相続の対象となることもありません。

開設にあたり、事前に担当部署にて信託契約書の文案のチェックが必要になります(場合によっては契約内容の修正を求められることもあります)。

なお、基本的に信託契約書は専門家が作成、組成に関与し、かつ、公正証書で作成されていることが求められています。

また、一般的に数万円の口座開設料がかかります。

口座の名義はどうなるかというと、金融機関によってその呼称は異なりますが、

「委託者◆◆受託者◎◎信託口座」

「信託口 受託者◎◎」

「委託者◆◆信託口受託者◎◎」

などがあります。

信託専用口座とは

信託口口座を開設できる金融機関はまだそれほど多くはなく、できたとしても細かい条件(預入金額が一定額以上など)があったりと、開設に困難を伴う場合もあります。

そのようなときは、信託専用口座で対応するケースもあります。

信託専用口座とは、受託者名義の(新たに開設した)個人口座を便宜的に信託専用の口座として使っていく方法です。

信託契約書のチェックや口座開設料もかかりませんが、金融機関で扱う信託口口座ではなく、受託者個人の口座なので、実質は信託財産であるにもかかわらず受託者の債務未払い、税金滞納などにより預金口座が差押えられたり、受託者死亡によって相続人が相続してしまうといった、一定のリスクはあります。

口座の中身が信託金銭であったとしても、あくまで受託者個人の口座名義なので仕方がありません。

信託口口座ではなく、信託専用口座で対応する場合、信託契約書に当該口座が信託専用口座であることをうたっておくことが一般的です(銀行名や口座番号を特定して契約書に書いておく)。

そのようにしておけば、委託者(受託者)から金銭が振り込まれていても、それは信託にかかる金銭のやり取りにあたるため贈与と認定されることはなく、贈与税の問題もありません。

預貯金口座そのものを信託財産とすることは?

なお、預貯金口座自体を信託することは結論から言って難しいです。

たとえば、信託契約書に「〇〇銀行〇〇支店普通預金口座番号○○○○」の口座を信託財産とする旨を定めたとしても、通常、預金口座は約款で譲渡禁止特約が付いています。

そして、銀行に預けているお金はお金そのものとしてみるのではなく、預金者が銀行に対する預金債権という財産権を有しているという扱いです。

したがって、信託行為も処分の一種であるため(受託者に託すという処分行為)、実質は譲渡にあたります。

銀行の承諾なく預金債権を受託者に移転すること(信託財産とすること)はできません。

そのため、実務上はお金を信託する場合、預金口座そのものを信託財産とするのではなく、「金銭〇〇万円」などとした定め方をすることが一般的です。

そして、委託者から受託者の信託(専用)口座に、信託契約に定めた金額を振り込むことになります。

なお、勘違いし易いところですが、受託者自らが委託者の口座から払い戻し、振込みができるわけではありません。

受託者は委託者の代理人ではないからです。

3.上場株式

上場株式を信託する場合、信託専用の証券口座を開設して口座移管手続きを取ることになりますが、現状、信託専用の証券口座開設に対応している証券会社は少数です。

また、株式を信託して証券口座を開設できたとしても、受託者の信託口座に移管したことによって株式保有期間がリセットされる場合があり、株主優待の点で不利益を受けるおそれがあるため要注意です(保有期間が長ければ長いほど優待内容で優遇される場合がある)。

4.動産

信託される財産はやはり不動産と金銭が中心になってくるので、実務上、動産を信託することは少ないですが、登録制度が整備されている動産(自動車、船舶など)を信託したのであれば登録手続きをする必要があります。

一方、登録できないような動産であれば外形上、信託財産と受託者の固有財産を区別しておく必要があります。

容易に、信託財産と受託者固有の財産とが見分けられるようにしておくのです。

5.まとめ

信託する財産は基本的に自由ですが、受託者には分別管理義務が課せられています。

不動産であれば登記、金銭であれば専用口座での保管などです。

信託財産と受託者個人の財産、明確に区別がつくよう保管することに、受託者は責任と義務を負っているのです。

受託者としては、信託がスタートしたのであれば、まずは分別管理のための手続きに取り掛かることになります。

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